契約書の形式

第1 契約書の形式に関する注意点

1.書面のタイトル

書面のタイトルにあまりこだわる必要はありません。中身さえしっかりしていれば、書面のタイトルは何でもよく、たとえば、「念書」でも「合意書」でも「契約書」でもいずれでもよいです。ただし、「売買契約書」など契約の類型に応じた記載をした方が、誤解を招くおそれがないので好ましいといえます。

2.署名・押印

(1) 署名と記名の違い

署名とは本人が手書きで自分の氏名を書く、つまり自署することをいいます。

これに対し、記名とは、署名以外の方法で自分の氏名を記載することをいいます。たとえば、ゴム印を押すことは記名にあたります。

契約書の作成にあたっては、「署名」と「記名」どちらを利用しても契約は有効です。ただし、記名による方法は本人以外の人が勝手に行うことができますから、信用性が高いとはいえません。そこで、記名のみということはできるだけ避けた方がよいでしょう。

なお、会社や事業者の取引において商法の適用がある場合は、記名に押印を加えることで、署名に代えることができます(商法32条)。

また、署名があれば押印がなくても契約書は有効に成立しますが、日本の商慣習上、署名に加え押印も一緒にすることが多いです。

(2) 印鑑の種類 ~実印でなければならないのか~

印鑑の種類については、実印でも認印でも、契約の効力に変化はありません。

もっとも、実印の方が信用性は高いですし、加えて、役所の発行する印鑑登録証明書もあれば信用性は非常に高まります。なぜなら、裁判では、契約書に実印があると、その人が押印したという扱いになり、書面に記載されたこと全体が有効と扱われるのが原則ですので(いわゆる「二段の推定」(民事訴訟法228条4項))、証拠としてとても価値が高いからです。

(3) 署名・押印は誰がすべきか

法人が契約当事者となる場合は、契約当事者である法人自身は生身の実体ではありませんので、署名ができません。そこで、法人の代表権者が署名・押印をすることになります。

代表者が署名をする際には、「商号(会社名)・代表者肩書き・代表者氏名」を記載します。なぜなら、商号(会社名)を記載することによって、個人とではなく会社と契約したことを示し、代表者肩書きを記載することによって、会社の代表として署名をしていることを示すことになるからです。

次に、代理人として契約書にサインをする場合は、本人についての記名をしたうえで、自らが代理人である旨の記載し、代理人としての署名・押印をすることになります。

(4) 社印と代表者印

ここで、社印と代表者印についても簡単に説明しておきます。

社判とは、角印とも呼ばれ会社の認印にあたります。契約書や領収書など対外的に発行する書類を会社として正式に認めた証明として使用されることが多く、「××株式会社之印」などをイメージするとよいでしょう。この社印だけでは、公文書として使用する際に認められないこともありますので、重要な書面については、代表者印と合わせて捺印します。

次に、代表者印とは、丸印とも呼ばれ、会社の実印のことを指します。印鑑証明書が必要とされるような重要な書面の場合には、こちらの代表者印を使用します。

(5) 捨印(契約書の内容の訂正)

捨印とは、訂正の場合を考えて前もって欄外に押しておく印をいいます。勝手に契約書を書き換えていいですよと言っているのと同じですから、捨印は控えましょう。間違えたときは、線を引いて消し、訂正印を押しましょう。面倒臭がってはいけません。

3.その他の注意点

一般論として契約書の成立に日付は無くてもよいですが、日付を記載する場合には、両契約当事者が署名をした時の日付を記載してください。

もし日付が重要となるような契約なら、効力の発生日を契約書の内容としてきちんと書いておいた方がよいと思います。

また、署名をする際に同時に住所を書くことが多いですが、それは住所の記載は本人の特定のために必要だからです。つまり、同姓同名の人、同名会社との混同を避けることになり、そのことが結果的に契約書の信用性を高めることにつながります。

第2 公正証書を作る意味作成する

公正証書とは、公証人がその権限に基づいて厳格な手続きを踏んで作成した文書のことをいいます。

今まで触れてきたような契約書を、公正証書によって作ることができます。なぜわざわざ公正証書で契約書を作成するのかというと、大きく3つのメリットがあるからです。

① 契約書の信用性が高まること

公正証書は厳格な手続きを踏んで作成されているため、偽造される可能性はほぼ皆無といってよいでしょう。ですから、公正証書によって作った契約書は信用性が高く、もし裁判になった場合、強力な証拠になります。

② 裁判によらず強制執行が可能となること

たとえば、こちらがお金を貸す際に契約書を作成したとしましょう。その後相手方がお金を返してくれない場合、通常は裁判で勝訴判決を得て相手方の資産に強制執行をすることになります。一方で、契約書を公正証書で作成し、その内容として執行受諾文言を入れた場合には、裁判によることなく公正証書に基づき強制執行ができるのです。

③ 安全であること

公正証書を作成する場合には、事前に公証人が内容をチェックしますので、契約書の内容が法律違反や公序良俗違反であることについての心配がなくなります。

また、作成された公正証書は原本を公証役場で20年間保管されますので、もし手元にある契約書を紛失しても再発行が可能です。

このように、公正証書という便利な制度もありますので、必要に応じて使用していくことになります。

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