「フランチャイズ契約」とは

第1 はじめに

近年「フランチャイズ」という言葉をよく耳にするようになりました。特に、コンビニやスーパーマーケットなどの小売産業や、ファースト・フードやレストラン、居酒屋などの外食産業では、「フランチャイズ」と呼ばれるシステムを利用する数が増加しています。

このように私たちの生活と無関係とは言えない「フランチャイズ」ですが、売買や賃貸借のように、「フランチャイズ」がどのようなものなのかを定めて、直接規制する法律がわが国にはありません(平成28年1月現在)。そのため、契約当事者間の地位や理解の仕方に齟齬が生じ、トラブルが生じることも少なくありません。

このコラムでは、「フランチャイズ」をめぐるトラブルを防止するために、「フランチャイズ」というシステム概要を説明します。

第2 フランチャイズとは

1 「フランチャイズ」の定義

現在「フランチャイズ」という言葉の意味については、様々な説明がなされています。この点、社団法人日本フランチャイズチェーン協会では、「フランチャイズ」を次のように定義しています。

  1. 「事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係」

これだけでは分かりにくいと思うのでピンとこないと思うのでもう少しかみ砕いて説明しましょう。

もともと「フランチャイズ」という言葉は、英語で「特権」「一手販売権」を意味します。上記の社団法人日本フランチャイズチェーン協会の定義も、この「特権」が何かを定めています。具体的には、以下の3つの権利が「フランチャイズ」の内容となる「特権」だとされています。

  1. ①フランチャイザーの「商標、サービス・マーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識」を使用する権利
  2. ②フランチャイザーの「経営のノウハウ」を利用する権利
  3. ③フランチャイザーの「指導および援助」を継続的に受ける権利

そして、この3つの権利を含む「特権」を与えて、その対価を受け取ることを内容とする契約のことを、一般的に「フランチャイズ契約」または単に「フランチャイズ」と呼んでいます。

※契約当事者の名称
フランチャイズ契約において、この「特権」を与える者のことを「フランチャイザー」と呼び、他方で特権を与えられる者のことを「フランチャイジー」といいます。わが国においては、「フランチャイザー」のことを「本部」、「フランチャイジー」のことを「加盟店」と呼ぶことがあります。本サイトでも、「本部」「加盟店」という表現で説明します。

2 フランチャイズ契約の法的性質

フランチャイズ契約というのは、どこか複雑で馴染みのないものだというイメージを持たれている方もいらっしゃると思います。しかし、実は私たちの生活に馴染みのある契約と大変類似する点があります。

まず、フランチャイズ契約は、もともとは本部のものである商標等や経営ノウハウを、加盟店が対価を払うことで使用できるようになる契約です。つまり、対価を支払って他人のものを使用する契約だと捉えることができます。この点に着目すれば、フランチャイズ契約というのは賃貸借契約(民法601条)に似ていることが分かります。

他方で、加盟店は、本部から継続的に指導や援助を受けることができます。これは一種の役務・サービスの提供です。そうすると、フランチャイズ契約というのは、「継続的な指導・援助」という役務・サービスの提供を委託する準委任契約(民法656条)にも似ているといえます。準委任契約というのは聞きなじみがないかもしれませんが、医師の診療や学習塾など私たちの生活環境でありふれた契約類型です。

このようにフランチャイズ契約は、賃貸借契約と準委任契約を合わせたような契約だと言えます。そして、裁判実務および学説も、フランチャイズ契約をこのような性質のものだと捉えています。

第3 フランチャイズの意義

1 加盟店にとっての意義

加盟店は、本部から上記のような「特権」が与えられます。つまり、加盟店は、一定の対価さえ支払えば、既に本部が確立したブランドイメージや経営ノウハウを利用して事業を行い、かつ本部から継続的に指導・援助を受けることができます。そうすると、独自に事業を起こす場合と比較して、経営上のリスクを低く抑えることができます。

加盟店がフランチャイズによって店舗を出す場合、店舗の設計・建設や各種機器等の発注は、本部で既に定型化された方法によって行われます。したがって、一般的には、出店にかかる初期費用も節約でき、かつ時間も短縮できるとされています。

さらに本部と加盟店は全く別個の事業体である点も1つの特徴です。加盟店の売上は、契約時に定めた一定の対価さえ支払えば、残りは全て加盟店に帰属します。したがって、加盟店としては、働けば働くほど儲かるというメリットもあります。反対に、事業に失敗したとしても、本部と加盟店は別個の事業体ですので、基本的にその失敗は全て加盟店の自己責任になります。

2 本部にとっての意義

上記のような説明をすると、「本部には、対価を得られる以外の意義はないのではないか」と考える方もいらっしゃると思います。しかし、フランチャイズには、本部にも以下のような意義があります。

まず加盟店が事業を始めるための資金は、原則として加盟店が負担します。そうすると本部は、自ら新店舗を設置する場合と比べて、比較的少額の資金で同一のブランドイメージの店舗展開をすることができます。

店舗展開が進めば、本部のブランドイメージをより強く消費者に訴えることができます。また、仕入れなどにかかるコストの低減などのスケールメリットも得られます。

以上

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