フランチャイズ契約が終了する場合

第1 フランチャイズ契約の終了原因

フランチャイズ契約の1つの特徴として、継続性があげられます。すなわち、フランチャイズ契約を締結すると、本部は加盟店の状況を随時チェックして適切な指導・援助をしなければならず、加盟店もロイヤルティを払い続けなければならないことになります。もし、このような関係が永遠に続くとなると、両当事者の負担は非常に大きいものになります。例えば、どんなに本部が指導・援助しても加盟店の経営状態が芳しくなかったり、反対に、加盟店が本部のやり方を信用することができなくなったりしたときは、契約関係を解消したいと思うことでしょう。そこで、フランチャイズ契約を締結するにあたっては、どのような場合にフランチャイズ契約が終了するのかを契約書に定めておく、というのが一般的です。

フランチャイズ契約の終了原因として、もっとも多いのは契約期間の満了です。この他にも、一方的に契約関係を解消する解除や合意に基づく解約などがあります。このように、フランチャイズ契約の終了原因といっても様々なパターンがありますから、本部および加盟店は、どのような場合に、どのような条件で契約関係を終了できるのかをきちんと把握しておく必要があるでしょう。このコラムでは、これらフランチャイズ契約の終了原因について説明します。

第2 契約期間の満了

1 契約期間の設定

フランチャイズ契約の締結にあたっては、上記のような背景から、各当事者が継続的に義務を履行し、または権利を行使する期間である「契約期間」を設定するのが一般的です。契約期間の上限・下限について、法律上の制限はありません。したがって、契約当事者は、投下資本を回収して、十分な利益をあげられる期間を自ら計算して、設定することになります。

2 契約期間の満了と更新

契約期間が満了すれば、フランチャイズ契約は当然に終了するのが原則です。もっとも、加盟店の経営状態が良ければ、引き続き契約関係を継続したいと思うこともあるでしょう。そこで、実務では、あらかじめ更新に関する条項を設けておくことが多いです。

更新の方法としては、「自動更新型」と「合意更新型」の2つに大別されます。

「自動更新型」というのは、契約期間の満了前に当事者の一方が更新を拒絶しない限り、契約が当然に更新されるという内容のものです。この場合、契約期間の終了間際の“不意打ち拒絶”を避けるために、「期間満了の○ヶ月前まで」といったかたちで更新を拒絶できる期間を定めておくのが一般的です。また、加盟店の自動更新への期待を保護するために、あらかじめ本部が更新を拒絶できる事由も限定しておくこともあります。

一方で、「合意更新型」というのは、契約期間の満了前、または契約期間の満了時に当事者が合意した場合に限り、契約が更新されるという内容のものです。この場合には、更新するか否かの協議をいつから始めるかについて、契約で定めておくのが一般的です。

第3 解除について

1 「解除」の概念

契約を一方的に解消する方法として、「解除」のほかに、「解約」という言葉をよく耳にします。この「解除」「解約」という言葉は、その使い方に若干意味が異なる場合があります。例えば、以下のように意味で使われることがあります。

  1. ① 効果に着目した使い分け
    「解除」=契約の効力を、はじめからなかったことにすること
    「解約」=契約の効力を、将来に向けてのみなかったことにすること
  2. ② 使われる場面(要件)に着目した使い分け
    「解除」=相手方に背信事由がある場合に、契約をなかったことにすること
    「解約」=自己都合または双方の合意によって、契約をなかったことにすること

なおこのコラムでは、上記②の用法にしたがって説明をします。

2 解除できる場合

(1) 法律の定めによる場合 ~法定解除~

民法上は、当事者の一方に契約違反がある場合(債務不履行)には、その相手方は契約の解除をすることができます。例えば、本部が契約に定めた商品の発送をしない、加盟店がロイヤルティを支払わない、といったケースです。このように法律の規定に基づいて行う解除のことを「法定解除」といいます。

債務不履行の類型としては、①債務者が期限内に履行しない場合(履行遅滞)、②社会通念上債務の履行が不可能な場合(履行不能)、③履行された内容が不完全な場合(不完全履行)の3つに大別されます。いずれの場合であっても、法定解除を行うには、債務不履行について債務者の帰責事由が必要だと解されています(民法543条参照)。また、履行遅滞の場合には、原則として履行を促す「催告」を行ってからでないと解除することはできません(民法541条。例外として民法542条)。

(2) 契約の定めによる場合 ~約定解除~

契約で定めた一定の事由が発生した場合に、契約に定めた手続にしたがって解除することを「約定解除」といいます。この約定解除は、実務上、法定解除の要件および効果を修正し、補充し、または明確化するために用いられています。例えば、①支払能力の不安や相手方に対する信用毀損など契約違反以外の解除できる事由を補充したり、②催告を行うことなく解除できるように修正したり(いわゆる「無催告解除特約」)するのが一般的です。

なお解除事由を定める場合について、詳しくはコラム「契約書の内容」を参照してください。

(3) 解除にあたっての注意点

裁判実務において、継続的な関係を前提とする契約においては、当事者間の信頼関係が破壊された場合でなければ解除することは許されないと考えられています。反対に、当事者間の信頼関係が破壊され、契約関係を継続することが著しく困難な場合には、催告なく契約を解除することができるとされています。これを「信頼関係破壊の法理」と言います(最判昭和39年7月28日、最判昭和41年4月21日参照)。

この信頼関係破壊の法理は、フランチャイズ契約においても適用されると考えられています。例えば、ロイヤルティの支払いが1回遅れた程度では、直ちに信頼関係が破壊されたとは言えませんので、解除することはできません。契約を解除するにあたっては、解除事由があれば当然解除できるわけではない、という点に注意しましょう。

第4 解約について

相手方に背信事由がない場合の契約の解消方法(このコラムでは以下、「解約」という。)としては、①任意解約条項を設定する場合と②合意による場合とに大別されます。

①任意解約条項とは、一方当事者の自己都合により一方的に契約を解消することができる旨をあらかじめ契約で定めておくことをいいます。もっとも、突然解約する旨を突きつけることで、相手方の利益を不当に害することもあります。そこで実務では、以下のような方法によって、解約の申し入れを受ける側の保護を図っています。

  1. (a)解約の申し入れから契約解消の効果が発生するまでのタイムラグを設ける
    (民法617条1項、借地借家法27条1項参照)
  2. (b)「正当な事由ある場合に限り」などと定めて解約できる場合を制限する
  3. (c)いわゆる「解約一時金」の支払を条件とする

②合意による場合とは、契約を解消する旨の契約をすることをいいます。この方法は、契約当事者の合意に至らなければ契約関係を解消することはできません。

以上

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