施設・設備の欠陥

第1 はじめに

「回転ドアにセンサーが付いていなかったために、子供が挟まれて死亡した」

「エレベーターの扉が開いたまま動いたため、天井とエレベーターの床に挟まれて人が死亡した」

「エスカレーターのベルトに巻き込まれて、人が上階から落下して死亡した」

このような事故があったことは記憶に新しいことかと思います。そして、このような事故が発生した場合に、事故の発生に関与した会社がそれぞれどのような対応をとるのかによって、その後の会社の信用に大きな影響を与えます。このコラムでは、会社の不祥事のうち施設・設備の欠陥による事故にみられる特徴と、事故発生時の対応の大まかな流れを説明します。

第2 施設・設備の欠陥による事故の特徴

施設・設備の欠陥による事故が発生した場合、「誰が対応すべきか、責任をとるべきか」という問題を、冒頭の回転ドアの事故のケースを例として説明しましょう。

回転ドアの不具合によって事故が発生した場合、①もともと回転ドアに欠陥があった場合、②回転ドアの管理・使用方法に問題があった場合、③この両方に原因があった場合と、大きく分けて3つの原因が考えられます。そうすると、「回転ドアの事故は、誰に責任があるか」と問われれば、①回転ドアの製造業者か②回転ドアの使用者、所有者、管理会社のいずれか、または双方に責任がある、と考えるのが一般的でしょう。

法律もこの考え方に対応しています。すなわち、回転ドアの製造業者(製造物責任法3条)、回転ドアの使用者ないし所有者(民法717条1項)、回転ドアの管理会社(民法709条)が、事故によって発生した損害を賠償する責任を負うと規定されています。

このように施設・欠陥の欠陥による事故は、「複数の会社が関与し、それぞれ責任を負うべき立場にあることが多い」という点に1つの特徴があります。したがって、場合によっては、1つの会社の内部の問題として処理するのではなく、複数の会社が協力して事故に対応しなければならないこともあるでしょう。

第3 施設・設備の欠陥による事故への対応方法

1 会社内部での対応

(1) 事実の調査を行う

施設・設備の欠陥による事故が発生した場合、事故に関する事実関係を迅速に調査し、正確に把握することが必要です。 具体的には、以下のような情報を収集することになります。

①いつ、どこで、誰が、どのような状況で事故に遭ったのか

②どのような事故が発生したのか

③被害の状況はどの程度か

④考えられる事故の原因は何か

収集した情報は、キチンと記録し、対策本部などで一元化して管理することが重要となります。このような事実調査を迅速に行うためにも、あらかじめ対応方法に関して、会社内部で取りきめておくといいでしょう。また、上記のように複数の会社が関与する場合には、各会社が別々に調査を行うのではなく、事故当時会社の担当者や専門家からなる「事故調査委員会」をつくって、その委員会が調査を行うのも1つの方法です。

(2) 再発防止策を講じる

事故が発生した施設・設備をそのまま使い続ければ、同様の事故が再発する可能性があります。したがって、事故の原因が明らかになる前であっても、同様の事故を防止するために必要な措置をとるようにしましょう。例えば、冒頭で紹介した回転ドアのケースであれば、事故のあった施設にある同種の回転ドアの使用を禁止したり、禁止が難しい場合には張り紙等で注意喚起したりすることが考えられます。

事実調査の結果、事故の原因が明らかになったら、より具体的な再発防止策を講じることになります。例えば、施設・設備自体に何らかの欠陥があった場合には、安全なものに交換することが必要となります。この他にも、当該施設・設備の設置を行った業者はさらなる安全性の研究を行う、施設・設備の管理者や点検業者は管理方法の見直しを行うことも重要となるでしょう。またチェック体制を強化するために、当該事故の関係会社の人事を一新するのも1つの方法でしょう。

2 会社外部への対応

(1) 被害者への対応

事故によって人が死傷したり、消費者の所有物を損壊したりした場合、会社としては、速やかに被害者への対応をとる必要があります。この被害者への対応は、その後の紛争の発展を回避し、報道による社会的信用の低下を最小限に抑えるために重要となります。

被害者への対応としては、謝罪、弔問、損害の賠償などが考えられます。ここで重要になるのは、「その時点でなし得る対応を、誠意をもって行う」ということです。もっとも、事故の発生が判明した時点で、すぐに事故の原因を明らかにして説明をしたり、上記の損害の賠償をしたりすることは困難かもしれません。しかし、会社の役員や責任者が被害者を尋ねて、謝罪を行うことはできます。その上で、時の経過によって明らかになった事項を随時報告し、必要に応じて損害賠償等の対応をすれば、会社側の誠意を示すことができます。

(2) その他の対応

施設・設備の欠陥によって人が死傷する事故が発生した場合、報道がなされて社会的関心の高い事件になるケースが多いです。このような場合には、一般的に、不祥事の経緯・原因、今後の対応、再発防止策等を公表する必要があると考えられています。

以上

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