監査役による企業不祥事の対応

第1 はじめに

会社をめぐる不祥事・トラブルとは、一般的には、法令・定款に違反する行為その他社会通念上不適切な行為と説明されています。具体的には、粉飾決算のような財務に関する不祥事、欠陥製品や食品偽装など消費者・取引先とのトラブルなどが挙げられます。監査役は、会社に対して善管注意義務を負っているので(会社法330条、民法644条)、企業不祥事を発見した場合には、その早期収束のために全力を尽くさなければなりません。仮に対応を誤ると、当該不祥事を放置していたとして、任務懈怠に基づく損害賠償責任(会社法423条1項)などの法的責任を問われることもあります。このコラムでは、監査役の観点から、企業不祥事に対してどのように対応したらよいかを説明します。

第2 監査役が採るべきトラブルへの対応(対株主を除く)

業務監査の過程で企業不祥事やその兆候を発見した場合、今後の対応を決めるためにも、現在に至る経緯や対応状況を把握する必要があります。そこで監査役としては、まず担当の取締役等から当該不祥事に関する報告を聞き(会社法381条2項参照)、早期収束・再発防止のための指摘や助言をすることになります。そして、損害の拡散防止のため必要があるときは、問題となった取締役の業務執行を止めるよう請求することも必要になるでしょう(会社法385条1項)。

企業不祥事の早期収束・再発防止を図るためには、当該取締役だけでなく、会社全体で対応する必要があります。そこで監査役は、当該不祥事やその兆候について、他の取締役・取締役会に報告するとともに(会社法382条)、指摘・助言をすることになります。

その他会社不祥事の早期収束・再発防止のために必要なことは、個々の不祥事によって異なります。詳しくは下記のリンク先を参照してください

コラム「施設・設備の欠陥による事故」

コラム「従業員の逮捕について」

コラム「従業員の不正、違法行為」

コラム「製品の欠陥による事故」

コラム「役員の不正、違法行為」

第3 トラブル発生時の監査役による株主への対応

取締役の不祥事により会社に損害が発生した場合、監査役は株主から「提訴請求」を受けることがあります(会社法847条1項)。これは、簡単に言ってしまえば「あの取締役に対して、会社を代表して損害賠償請求をしてくれ。監査役がやらないなら株主がやるぞ。」という内容のものです(詳しくはコラム「会社法トラブルその10~株主代表訴訟」参照)。

さて監査役は、取締役の不祥事にかかる提訴請求を受けた場合、60日以内に提訴するかの判断を行わなければなりません(会社法847条3項参照)。そこで、監査役としては、提訴請求を受けた後速やかに必要な情報を収集して、提訴するか否かの検討を始めることになります。具体的には、以下のような対応をします。

  1. ① 取締役や関係部署に提訴請求を受けた旨の通知をし、問題になっている不祥事についての事実確認・資料収集を行う。
  2. ② 株主による提訴請求が適法なものか、株主の主張に理由があるのかを確認する。必要があるときは弁護士などの専門家に相談する。提訴しない場合にはその理由を請求者に対して書面で通知しなければなりません(会社法847条4項)。
  3. ③ 提訴の当否判断のために行った調査や判断の過程、結果を記録・保管するとともに判断の結果を取締役・取締役会に通知する。

以上

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