契約書(公正証書)の作成

第1 公正証書作成のすすめ

コラム「契約書作成の基礎(総論)」で、自分で契約書を作成する上で注意すべきポイントを説明しました。また、このコラム以外にも契約書の作成方法に関する書籍が市販され、様々なアドバイスが記載されています。しかし、これらの注意点に基づいて契約書を作成したとしても、「そんな契約書は知らない。あれは改ざんされたものだ!」と契約の存在自体が争われたり、「そんな内容だとは思わなかった」と契約内容の理解に食い違いが生じたりと、トラブルになることがあります。このようなトラブルを避けるための1つの方法として、多少手間はかかりますが「公正証書」というものがあります。以下、公正証書のメリットと作成方法について説明します。

第2 公正証書のメリット

1 契約書の信用性が高まること

公正証書とは、公務員である「公証人」が作成し、その内容について問題がないと公的に証明した文書のことをいいます。もう少しかみ砕いて言うと、公正証書というかたちで契約書を作成すると、本来私人間の一約束に過ぎない契約に対して、国がいわば“お墨付き”を与えたことを意味します。そして、この公正証書というのは、後述するような厳格な手続を経て、作成されます。したがって、内容が偽造される可能性はほぼ皆無であり、取引慣習上、大変強力な信用力を持っています。また、後日裁判になった場合にも、当事者間で間違いなくそのような契約が締結されたことを示す証拠として、強い証明力を持ちます(民事訴訟法228条2項)。

2 裁判によらず強制執行が可能となること

コラム「債権回収の流れ」で説明したとおり、契約書どおりの金銭を、債務者から強制的に取り立てようと思ったら、「債務名義」というものを取得しなければなりません。通常は、「お金を払え!」という訴えを提起して、勝訴判決を得るという方法を経なければなりません(詳しくはコラム「裁判所を利用した請求」)。

これに対して、公正証書の場合、契約書中に「約束を守らず、支払を怠ったときは、直ちに強制執行に服する」といった内容の条項(「強制執行認諾条項」)を定めておくと、その公正証書が「債務名義」になり、すぐに強制執行をすることができます(民事執行法22条5号)。このような公正証書のことを、「執行証書」と言います。

3 安全であること

契約書を作成しても、契約内容の認識の齟齬からトラブルになることがあります。この点公正証書は、事前に公証人が契約書の内容をチェックする、という性質があります。公証人のほとんどは、元裁判官・検察官で、いわば「法律のプロ」ですから、公証人のチェックが入ることで、契約書の内容に関するトラブルを回避しやすくなります。

また、作成された公正証書は、原本を公証役場で20年間保管されます。したがって、万が一契約書を紛失してしまっても、公証役場に行けば再発行してもらうことができます。

第3 公正証書の作成方法

まず、当事者双方が公証人役場へ出頭することが必要になります。その際、本人であることを確認できるもの(運転免許証やパスポート、実印+印鑑証明など)を持参しなければなりません。「本人が出頭できない」と言う場合には、代理人でも可能です。但し、実印を捺印した委任状と、代理人の身分確認できるものを持参する必要があります。

公証人役場では、公証人が、当事者双方の言い分を聞いて、公正証書を作成します。時間短縮のためにも、事前に当事者で十分に話し合い、契約内容のおおすじを決めてから公証人役場に行くと良いでしょう。

公正証書が作成されると、公証人がその内容を当事者双方に読み聞かせて、または閲覧させて確認をとり、当事者双方に署名捺印をしてもらいます。

必要書類や費用など詳しい手続については、ケースバイケースですので、公正証書を作成しようとするときは、事前に公証役場に問い合わせておくと良いでしょう。

以上

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