私的整理手続の特徴

第1 倒産とは

「会社が倒産した」という言葉を聞いたことがあると思いますが、「倒産」というのは法律上の用語ではなく、厳密な定義はありません。一般的には、会社が債務の弁済をできない状態になった場合を「倒産」と呼んでいます。たとえば、破産・民事再生・会社更生の申立て、代表取締役ら経営陣の夜逃げなどがあると、倒産と判断されます。また、6ヶ月間に2回手形の不渡りを出すと、銀行取引停止処分を受けて銀行取引ができなくなることから、その会社は事実上倒産したといわれます。

倒産というと、直ちに会社が消滅することをイメージしている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。倒産の後会社が消滅してしまうことももちろんありますが、倒産後に会社を再建している例も数多く存在します。過去の例をあげると、そごうやカネボウといった多くの方がご存知であろう有名企業も倒産の後に消滅することなく会社を再建しています。

会社が倒産した後の処理としましては、大きく分けて「私的整理」と「法的整理」の2つがあります。このコラムでは、このうち「私的整理」の概要について説明します。なお「法的整理」については、コラム「法的整理手続の特徴」を参照してください。

第2 私的整理手続の特徴

1 私的整理とは

私的整理とは、裁判所の外で行われ、第三者の介在を前提とせずに、債務者・債権者間の任意の合意に基づいてなされる倒産処理の形態を広く指すものです。任意整理と呼ばれたりもします。具体的にイメージするためにごくごく簡単にいうと、債務者が債権者に「このままだと債権者への支払いができなくて会社がつぶれちゃいます。だから、借金の返済期限延ばすか債権放棄してください。」とお願いして、債権者がそれを受け入れることです。債権者は、債権の一部免除をすることで債務者が事業活動を継続できれば、その後債務者が盛り返して取引が続き多くの利益が得られる可能性があるため、債務者の要望に応じるのです。

なお、私的整理と同じく裁判外の倒産手続としていわゆる倒産ADR(Alternative Dispute Resolution)というものがあります。この倒産ADRは、第三者の介在を前提としており、この点が私的整理とは区別されます。

2 私的整理の特徴

法的整理と比較して、私的整理には以下のような特徴があります。

(1)私的整理の利点

①手続が簡易

法的整理は裁判所における手続として、必然的に様々な手続(債権調査・確定、財産調査等)や裁判所・管財人などの機関の関与を必要とするため、複雑な方法にならざるを得ません。それに対し、私的整理は、すべて関係者の合意のみで処理されるため、簡易な手続によることが可能になります。

②手続費用が低額

法的整理では、管財人等の報酬が最低限必要となるため、それだけで相当の出費になります。それに対し、私的整理の手続は債権者が主導するものの報酬を求めないのが一般的であるとされています。

③手続が迅速に終了する

裁判所が関与する法的整理だと早くても半年程度の期間はかかりますが、私的整理では当事者間の合意さえ成立すれば、かなり短い期間で終了させることも可能です。

④手続を秘密裏に行うことができる

倒産手続の開始は官報に公告されますし、大企業であれば午前中に倒産手続の開始申立てをすれば、ほぼ間違いなくその日の夕刊にその旨の記事が載ることになります。つまり、倒産したことを秘密にしておくことは不可能です。それに対し、私的整理では、債務者・債権者等の関係者が口外しなければ、私的整理という措置をとったことを秘密にしておくことも可能です。倒産の事実は債務者にとってもっとも知られたくない情報であり、さらに、債務者が事業を継続していく場合には倒産情報が流れることは死活問題になることから、秘密裏に行うことができるのは、債務者にとって大きなメリットになるといえます。

(2)私的整理の問題点

①手続が不透明

当然ですが、私的整理には法律で定められた「手続」というものがないので、次にどのようなことを行うのかがまったくの自由である反面、債権者から見ても債務者から見ても、手続の見通しが立ちません。

②手続の不公平性

法的整理では、債権者間の公平や平等が考慮され、必要な場面で裁判所の監視や関与の機会が定められており、一定の公平性が保たれています。それに対して、私的整理では裁判所のような監視・関与機関は存在しません。ですから、一部の債権者が他の債権者や第三者の犠牲において利益を得て、うやむやのうちに倒産処理を終了させてしまうことも可能であり、債権者間の公平・平等な取扱いがなされないこともありえます。

以上

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