組織再編と類似する制度

第1 はじめに

コラム「組織再編とは」で、会社法上の組織再編という手続以外にも、会社と会社がいわば“結合”して、その形体・性質を変える手続が存在することを説明しました。

組織再編と類似の制度ないし同様の効果を生じるものは枚挙に暇がありません。例えば、一般的に「買収」と呼ばれているものとして、被買収会社の株式を買い付ける方法があります。これは筆頭株主となって被買収会社を支配しようという点で、株式交換に類似する点があります。もっとも、会社法上の制度として確立しているものではなく、実務上も非常に多岐にわたる方法が考え出されています。

その中でも、法律上特徴のあるものとして組織変更と事業譲渡が挙げられます。このコラム中では、組織変更について説明します。事業譲渡については、コラム「組織再編と事業譲渡」を参照して下さい。

第2 組織変更について

1 組織変更とは

組織変更とは、「会社が法人格の同一性を維持しながら、その会社の形態を変更すること」と言われています。具体的には、株式会社が持分会社に、及び持分会社が株式会社になることを言います(持分会社についてはコラム「持分会社と会社法」参照)。

合併や会社分割によって、株式会社(又は持分会社)の全部又は一部が、持分会社(又は株式会社)の一部になることはあります。しかし、合併や会社分割は2つ以上の会社が協力しなければ実施することができません。この点、組織変更は1つの会社が単独で実施する点で、合併や会社分割と異なります。また、1つの会社しか登場しないので、会社を構成する事情(誰が出資者か、どのような財産があるか等)に変動はありません。先ほど出てきた「法人格の同一性を維持」というのは、このようなポイントをとらえた状態のことをいいます。例えるならば、合併や会社分割は別々の会社というロボットの“結合行為”であるのに対して、組織変更は1つのロボットの“変形行為”ということができます。

なお組織変更手続の過程で“不具合”が生じた場合には、訴えによって組織変更をなかったことにできる(無効)点は、組織再編の場合と同様です(詳しくは、コラム「会社法トラブルその12-組織再編無効の訴え」参照)

2 組織変更の手続

組織変更の手続は概ね組織再編の手続と同様です。以下、コラム「組織再編の手続」で説明した流れに沿って説明します。

①変形後のロボットの設計図をつくる

まずは法定の組織再編計画という“設計図”を作成します(会社法743条。記載事項については744条1項、746条1項参照)。

②ロボットの改良等の告知

株式会社が持分会社に組織変更する場合には、組織再編計画等を株式会社の本店に備え置き、閲覧等に供することが必要となります(会社法775条1項)。

③出資者の承認を受ける

コラム「持分会社と会社法」でお話しした通り、会社に対する出資者としての地位(株主ないし社員)の性質が異なります。したがって、組織再編の場合と異なり、全ての出資者の承認を得なければ、組織変更を実施することはできません(会社法776条1項、781条1項)。

④不服のある者への対応

上記の通り、株主ないし社員全員の承認が必要とされているので、反対する株主ないし社員がいれば、組織変更がなされることはありません。したがって、組織再編の場合と異なり、「組織変更に反対する株主(社員)に配慮する」手続は設けられていません。

他方で、債権者については、組織再編と同様に、異議を述べる手続が設けられています(会社法779条、781条参照)。

⑤ロボットとして活動を始める

組織変更を行う会社が、その会社の意思通り、すなわち最初の“設計図”組織変更計画書で定めた「効力発生日」に効力が生じます(会社法745条1項、747条1項)。

上記の通り、組織変更は、その前後を通じて会社を構成する事情に変動はありませんが、会社という社会における存在形態に変化があります。例えるならば、自家用自動車から事業用自動車に変更するようなものです。そうすると既に登録してある“ナンバープレート”の変更が必要となります。したがって、組織変更の効力発生日から2週間以内に変更前の会社の解散登記及び変更後の会社の設立登記を行う必要があります(会社法920条)。

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