Q2 残業命令はできる?

埼玉県 M産業株式会社さん

会社が残業を命じるためには、労働者との間で取決めをすることが必要だと聞きました。当社では、そうした協定がないのですが,どうしたらいいのかないのかよくわかりません。どうしたらよいでしょうか。

Answer:残業命令をするには、「三六協定」(さぶろくきょうてい)と呼ばれる労使間の協定を結ぶことが必要です。会社にはこの三六協定についての周知・届出義務があります。

1 三六協定とは

会社が時間外労働や休日労働(残業)を命じるためには、労使間の協定が必要です。労働基準法32条により,使用者は労働者に休憩時間を除いて週40時間を超えて労働させてはならず,また,休憩時間を除いて1日8時間を超えて労働させてはならないとされています。
もっとも,これには例外があります。労働基準法36条により,労働者の過半数を代表する者(※1)と書面で協定を結び、労働基準監督署に届けておけば,32条の制限を超えて労働させることができるようになります。労基法36条によって規定された協定ですから、俗に、この労使間の協定を「さぶろく;三六協定」と言います。会社は、その協定の範囲内でのみ、労働者に残業を命じることができます。
なお,三六協定の締結なしに残業が行われた場合でも、割増賃金支払義務が使用者に生じます(小島撚糸事件・最小一判昭35.7.14)。

※1 三六協定の要件
この協定には以下の条件が必要になります。
①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合には過半数の労働者を代表する者と結ばなければならないこと。この場合、「過半数を代表する者」は、事業場全体の労働時間などの計画・管理に関する権限を有する者など、「管理・監督者」であってはなりません。
②過半数を代表する者の選出は、民主的に行われなければならず、選出方法を三六協定に記載しなければなりません。投票、挙手、起立による選出や回覧も含めた信任投票は認められますが、使用者の指名や、一定の役職者による互選などは認められません。
また、選出の母数となる「事業場の労働者」には、労働基準法9条で定義されるすべての労働者が含まれます。年少者やパート・非常勤職員、管理監督者等も含めて(ただし、派遣労働者は含まれません)の過半数が必要になります。過半数代表の選出手続きについて、労働基準法施行規則6条の2は、「投票、挙手等の方法により選出しなければならない」と定めていますが、行政通達は、「労働者の話し合い、持ち回り決議」等での選任支持も認めています。しかし、できるだけ投票が望ましいことはいうまでもないでしょう。トーコロ事件判決(最二小判平13.6.22) は、従業員の親睦団体代表を自動的に代表者とした協定を違法・無効であると判断しています

2 三六協定の周知・届出義務

三六協定について,使用者には労働者への周知義務があり,「労働者が必要なときに容易に確認できる状態にし」なければなりません(平成11年1月29日 基発第45号)。さらに、締結した三六協定は、労基署に届出しなければなりません(※2)。
もし労働者の方が会社に三六協定があるか分からない状態であるならば,労働基準監督署に申告して周知させるように指導・勧告させるとともに労働基準監督署で閲覧できるよう求めると良いでしょう。使用者が,こうした申告を行った者を不利益に扱うことは禁止されており(労働基準法104条)不利益行為行った使用者には罰則が科されます(労働基準法119条)。

※2 労基署への届出
過半数代表と締結した協定は、労働基準監督署に届けられて、はじめて効力を持つことになります。届出を怠った場合は、残業を命じる効力はありません。

3 三六協定の内容

三六協定には、①時間外労働をさせる必要のある具体的事由、②業務の種類、③労働者数、④延長できる時間の上限、⑤休日労働の回数等、⑥有効期間など6項目の具体的内容が記載されていなければなりません(届出様式は巻末資料参照)。時間外労働の上限については、厚生労働大臣の告示で一定の基準が定められています。

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