Q3 残業命令には従わなくてはいけないの?
千葉県在住 T.Nさん
私は工場で働いていますが、注文生産の納期に間に合わせるため、終業間際になって急に残業してほしいと頼まれる時期があります。三六協定は締結されているようですが,こうした急な残業命令にも従わなくてはいけないのでしょうか。
Answer:その職場の状況ですと,三六協定が適切に結ばれている場合には、残業命令に従わなくてはならないとされると考えられます。
1 労使間での三六協定の締結がある
残業が適法となるためには,労使間で三六協定が結ばれた上で(三六協定について、詳しくはコチラ),適法な残業命令がなされなければなりません。
2 適法な残業命令である
三六協定が適切に結ばれていても,一定の場合には残業命令は適法でないものとされ,残業命令に従う必要はありません。
適法でない残業命令とは,
- ① 労働者に残業を行うことのできないようなやむを得ない理由がある場合のもの,
- ② 時間外・休日労働(残業)を命ずる業務上の必要性のないもの などです。
今回の質問の場合は,納期に間に合わせる必要があるとのことですので,②業務上の必要性はあるものと考えられます。
残る問題は,①の労働者に残業を行うことのできないようなやむを得ない理由があるかどうかです。裁判上は,労働協約または就業規則で「業務上の必要があるときは三六協定の範囲内で時間外・休日労働を命じる」旨が明確に定められている限りは、労働契約上も命令に従う義務が生ずるとされることです(包括合意説と呼ばれています)。しかし,使用者側の残業の必要性と労働者側の拒否理由を比較考量した結果,残業命令が権利濫用であるとして無効となることがあります。
本件では残業の必要性が高いものと思われますが,親の介護や子供の保育園への送迎について自分の代わりがおらず,残業をしないで帰らなくては支障をきたすこととなるといった事情があると,残業命令が権利濫用となることもありえます。