有期雇用契約の期間満了による雇止めに関する法律知識

第1 雇止めとは

雇止めとは、有期契約の期間満了時に労働契約を更新しないこと、つまり更新拒否を意味します。

契約に期間の定めがあって、その期間が過ぎたならば、その契約は終了するのが当然だと思われるでしょう。現に、契約に関する一般法則においては、契約が何回更新されていようが、一方当事者がどんな期待を持っていようが、契約期間が満了すれば、契約は終了します。

しかし、民法においては、雇用契約が満了しても、従業員が引き続き業務に従事しており、雇用主がそれを知りながら異議を述べないときは、同じ条件で契約が更新されたものと推定されます(民法629条1項)。

さらに、労働契約法19条は、一定の場合には更新拒否が認められないと規定しています。そこで、今回は、この会社が「雇止め」を適切に行うためのポイントをお話したいと思います。

第2 なぜ雇止めが規制されるのか

この点について説明するために、解雇との比較をしてみたいと思います。

雇止めと解雇は会社と従業員との雇用契約を終了させるという点では共通です。

しかし、その実質は大きく異なります。期間の満了で契約が終了していて、その契約を更新しないこと、これが雇止めです。

一方で、解雇は、解雇がなければ続いていくはずの雇用契約を雇用主が一方的に終了させることです。それゆえ、解雇は解雇権濫用法理(労働契約法16条)によって厳しく規制されているのです。

このように、雇止めと解雇の実質は大きく異なるのですが、そうはいっても、両者は雇用契約を終了させるという点で似ているため、規制の必要があるとして近時制定されたのが雇止めに対する規制である労働契約法19条です。

労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
  1. ① 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
  2. ② 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

第3 適切な雇止めの条件

当該有期契約が期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態で存在している場合(実質的無期契約型 労働契約法19条1号)や、雇用継続の期待が保護に値する場合(期待保護型 労働契約法19条2号)に、雇止めが制限されます。

なお、実質的無期型(労働契約法19条1号)については契約更新手続きをしっかりしていれば問題ないため、主に問題となるのは期待保護型(労働契約法19条2号)であると考えてしまってよいと思います。

そして、従業員に誤った期待を抱かせないようにするためのチェックポイントは以下のようなものです。

①契約内容を確認する

採用時の雇用条件通知書または契約書に更新を予定した契約条項がなければ、従業員の雇用継続の期待につながりにくくなります。そこで、まず雇用条件通知書または契約書の内容を確認することが必要です。後に争いになった場合にこれらを確認することもありますので、契約を更新したときは、古いものは保存しておきましょう。

また、契約上の地位が臨時的・季節的なものであれば、従業員は雇用継続の期待を抱きにくいといえます。たとえば、嘱託や非常勤講師は長期雇用を前提とした恒常的なものではないと考えられています。また、夏期繁忙期のみの契約といった季節的な雇用の場合も雇止めをしやすいといえるでしょう。

ちなみに、初回更新の場合つまり一度も契約更新をしていない場合でも、従業員の契約更新への期待が合理的であると判断されれば、雇止めが違法となることがあります。

②当事者の主観的対応

次に確認すべきことは、会社から、従業員が雇用継続を期待するような説明・言動がなかったかです。雇用主がすべき具体的な対応としては、採用の際に契約更新しないこともあり得ると説明し、同時に契約書に不更新条項や更新回数の規定を盛り込んでおくとよいです。担当者が「契約書の雇用期間は形だけ」などと長期雇用を前提とするような言動をしたりして、従業員に過大な更新の期待を抱かせないように注意してください。

③更新の手続

更新の手続についてもっとも重要なのは、そもそも更新手続自体をしっかり行うことです。雇用期間が終了しているのに特に手続をすることもなく、なんとなく働き続けているという事態が一番よくありません。

事態を避けるために、たとえば「契約満了の1ヶ月前までに書面で契約更新手続きを行う」ということをあらかじめ決めておき、しっかりと更新契約書を取り交わすようにしましょう。厳格な更新手続きを行うことで、従業員に誤った雇用継続の期待を抱かせることを避けることができます。

また、今までに会社内で更新を拒否した事例がなかった場合には、従業員の雇用継続の期待が生じやすくなっているといえますので、そういった場合にはより慎重に対応をすることが必要です。

④その他

雇止めをするにあたり、一定の場合には、厚労省の通達「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」によって一定の手続きが必要な場合があります。具体的には、「雇止めを行う際に、有期契約を3回以上更新している場合や、通算で1年を超えて継続勤務している場合には、契約期間満了の30日前までに予告をすること」が求められています(同基準2条)。

なお、同基準では「有期契約の締結の際に、更新の判断基準を明記すること(同基準1条)」も求められています。この点からも契約(採用)段階から適切に雇止めをするための準備をすることが重要であることがおわかりいただけると思います。

また、雇止めをする場合には、従業員から証明書の交付を請求された場合には、証明書を交付しなければなりません(労働基準法14条2項に基づく厚労省通達「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」)。そこで、その証明書に記載するための、雇止めの理由やその証拠を整理しておく必要があります。有期雇用の目的と雇止めの理由との整合性に注意してください。

第4 保護される雇止めにあたるととどうなるか

簡単にいうと、無期雇用の従業員に対する解雇と同じように、厳格に雇止めの成否が判断されます。たとえば、会社都合による雇止めの場合には、解雇に準じて厳格な4要件で判断されることになります。

第5 期間の定めのない労働契約への転換

継続雇用してきた従業員のこれまでの契約期間が5年を超える場合、従業員から雇用主に対する期間の定めのない雇用契約への転換の申出によって、無期雇用契約が成立します(労働契約法18条1項)。

雇用主はこの期間の定めのない雇用契約への転換を拒むことができません。ですから、有期雇用契約が5年を超えることはきわめて大きな意味を持つことになります。不用意に契約継続を繰り返さないよう注意が必要です。

第6 最後に

事前に十分な対応をとっていれば、適切に雇止めを行うことが可能です。近時法改正があった分野でもありますので、規定の整理や対応を確認したいという方はぜひ一度ご相談ください

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