選べる婚姻届のスタイル
2018年09月27日
弁護士の小川です。
最近、「インスタ映え」という言葉をよく聞くようになりました。
主には食べ物をイメージしますが、婚姻届の用紙にも見栄え重視の傾向があると知って面白いなと思いました。
婚姻届といえば、役所で用意している無地の地味な用紙が基本ですが、実は、イラスト入りや、カラーのもの、ご当地ものといったバリエーション豊富な用紙がいろいろあります。
そもそも役所に出す用紙なので、所定のもので提出しなくてはいけないと思いこみがちですが、法律ではどのように定められているのか調べてみました。
民法には、「戸籍法の定めるところにより届け出る」とだけ書かれており、戸籍法の74条では、記載事項として、「夫婦が称する氏」、「その他法務省令で定める事項」と書かれています。この「その他法務省令で定める事項」というのは、戸籍法施行規則56条以下に、「父母の氏名」、「同居を始めた年月」等とあります。その他に施行規則59条で「婚姻の届出書は附録第十二号様式」によらなければならないという定めがあります。この様式は附録第12号で図式化されていて、図の端に、「日本工業規格A列三番」とあり、サイズも決まっています。聞き慣れない表示ですが、これは「A3用紙」のことだそうです。
結局、どこまで自由でいいかというと、記載事項と様式の定めはあるので、自由にできるのは枠の部分を装飾するというのが限度になりそうです。
そこで、枠部分を装飾したいろいろなバージョンの婚姻届が出ています。
ある出版社と自治体がコラボレーションして、自治体の特色を出したイラストや色を使用したものもあります。自治体としては、少子化対策を意識したり、地元の特色を知ってもらうメリットがあるそうです。
記載事項と様式が守られていれば、どこの役所で用意している用紙を使ってもいいので、住んでいる地域は違うけれども地元の用紙を使ってみようとか、全く縁はないけれどデザインが気に入ったからその自治体の婚姻届の用紙を使用してみようというように選択肢は広がります。
もっとも、役所に提出してしまうので、どんなに装飾して好みのスタイルの届け出用紙を選んでも手元に残らないのでは?と思っていましたが、この出版社と自治体のコラボレーションの場合は、婚姻届として役所に提出する以外に、自分たちの手元に残す別紙も用意しているそうで、なるほどと思いました。しかも、役所に提出したものの一部だけ記載し、残り半分は自分たちのメッセージを書いたり、写真を貼ることができるそうです。
戸籍法には出生届や離婚届、死亡届についても、婚姻届けと同じような定めがあるので、もしかしたら、今後、他の届け出も婚姻届のようにバリエーションが増えてくるのかもしれません。