【家庭問題】配偶者の財産の仮差押え
2015年11月06日
1. 事案の概要
依頼人は、結婚20年以上の妻です。子どもは2人(成人している私立大学生と中学生)です。
夫は、妻に対し、1年前に突然離婚を要求しました。妻がこれを拒否すると、夫は家を出て、不貞相手と同棲を開始し、家に戻らなくなりました。
2. 行った手続
相談を受けたのち、まず、婚姻費用分担の調停を申し立て、調停が不成立となった後に、婚姻費用分担の審判を申し立てました。夫婦は、たとえ別居中でも、相互に婚姻費用を分担する義務があります。本件のように、夫婦共稼ぎであっても妻が子どもの世話をしている場合、夫は妻に対し相応の生活費を支払う義務を負うケースが多いので、泣き寝入りする必要はありません。
その後、妻が離婚を決意したため、夫の不貞行為を理由とする離婚に加え、慰謝料及び財産分与を求める訴訟を提起する準備を開始しました。
夫婦には所有不動産はなく、夫は、通帳等はすべて持ち去り、財産は存在しないと言っています。これでは、裁判に勝ったとしても、事実上、夫が慰謝料等を支払わないおそれが高いです。そこで、慰謝料請求権等を保全するために、訴訟の提起に先立ち、夫の給料、退職金等に対する仮差押命令を申し立てました。
3. 相手方配偶者が勝手に財産を処分したり隠したりする恐れがある場合
本件のように、相手方配偶者が、婚姻費用、養育費、慰謝料、財産分与などの支払いを回避するために、勝手に財産を処分したり、隠したりするケースがあります。そのような場合に備え、裁判で決着する前に、相手方の特定の財産(本件の場合、夫の勤務先会社に対する給料債権、退職金債権等です。)を仮に差し押さえる命令を求めることができます。
民事保全手続は、裁判での決着を待たずに相手方の財産の処分権を制限するという強制力を伴う手続ですから、保全命令を得るための要件は厳格です。保全の必要性や緊急性に加え、相手方に離婚原因が認められる蓋然性などを主張・立証しなければならず、通常、担保金の支払も要求されます。
また、保全手続の申立ては財産が処分される前に行う必要があるため、スピーディに調査・手続を進めなければなりません。
その意味では、保全手続については、弁護士等の専門家に依頼することが望ましいでしょう。
4. 結果
婚姻費用については、夫は妻のほうが高収入である等と主張しましたが、裁判所はこれを容れず、妻の申立てが認められました。
また、仮差押命令の申立てについては、夫が財産隠しを行っていると認められる事情を主張・立証したところ、裁判所は、夫の給料・賞与・退職金等に対する仮差押えの決定を出しました。
5. 解決までの期間
約6か月
7. 弁護士費用
総額約40万円