【家庭問題】離婚裁判の事案
2015年11月06日
1. 事案の概要
依頼人は、結婚20年目程度の夫婦の妻です。中学生の子どもが一人います。
夫は、結婚10年目から勤務先の女性と不倫関係を続けてきたところ、妻に対して離婚請求訴訟を提起しました。
2. 行った手続
まず、夫からの離婚請求訴訟に対して、妻から離婚及び不貞を原因とする慰謝料請求の反訴を提起しました。その後、不貞相手に対する損害賠償請求訴訟も提起し、離婚訴訟との併合審理を申し立てました。
夫が既婚者であることを不貞相手が知っている場合、一般的に、不貞相手に対し損害賠償を請求することができます。この訴訟を夫婦間の離婚訴訟と同一手続で審理することにより(これを併合審理といいます。)、夫の不貞の事実を立証しやすく、一挙解決が図れるのです。
3. 反訴の必要性
反訴とは、訴訟の係属中に被告が本訴に併合して原告を相手として提起する訴えをいいます。本件でいうと、訴えられている妻(被告)が、訴えている夫(原告)に対し、同じ訴訟手続内で、訴訟を提起することです。夫が離婚を求めているのだから、妻も離婚したいのであれば、夫の訴えを認めればすむのではと思われるかもしれません。
しかし、離婚訴訟では、離婚原因が主張・立証された場合に限り、離婚が認められます。離婚原因を主張・立証するのは、訴訟を提起した原告ですから、夫は、不貞の事実を隠し、夫婦関係が破綻した原因は妻にあると主張するでしょう。妻としては、夫が主張する離婚原因によって離婚が認められても、納得がいきません。そこで、妻は、夫の不貞行為こそ夫婦関係破綻の原因であると主張して、離婚請求の反訴を提起するのです。
また、16年間の結婚生活中12年間も夫が不貞を続けたことによる妻の精神的苦痛は大きく、相応の慰謝料請求権が発生すべきところ、裁判所は、夫の離婚請求訴訟において慰謝料の判断をすることはできません。裁判所は、訴えられた内容についてのみ判断することが許されているからです。したがって、妻は、慰謝料についても反訴を提起する必要があるのです。
4. 結果
不貞相手も引き込んで不貞の事実を立証することで、妻の主張する離婚原因による離婚、夫に対する慰謝料請求、不貞相手に対する損害賠償請求の全額が認められました。
5. 解決までの期間
約1年1か月
6. 弁護士費用
総額約70万円