株主総会の手続の概要

第1 はじめに

コラム「会社の機関」で、株式会社という人工物(“ロボット”)を動かす上で特に重要な事項は、オーナーである株主が意思決定を行うこと、その意思決定を行うのが「株主総会」というところだと説明しました。

さて株主総会=株主によって構成される会議体という説明から、「株主に集まってもらって話し合いをする」というイメージをする方もいることでしょう。では、話し合いの場が提供されればいいのかというと決してそうではありません。株主総会が、株式会社のオーナーである株主が意思決定を行うところである以上、株主の意思がキチンと反映され、確認できる仕組みになっていなければなりません。仮に会社法や定款に定められた株主総会の手続が行われなかった場合には、株主の意思をキチンと反映することができていないとして、株主総会の決議がなかったこととして扱われることがあります(詳しくはコラム「会社法トラブルその5 株主総会決議取消しの訴え他」参照)。

このコラムでは、株主総会を招集する手続と各種必要書類の書式を紹介します。

第2 株主総会の開催を決定する

皆さんが会議を行おうと思ったら、まずは「いつ」「どこで」「どのような目的で」会議を行うのかを決めることでしょう。株主総会の場合も、これと同様です。株主総会を開催するとなったら、株主総会の内容、すなわち①開催する日時及び場所、②株主総会の目的となる事項(議題)を決定しなければなりません(会社法298条1項1号2号)。この決定を行うのは、取締役(取締役会設置会社では取締役会(会社法298条4項))です。取締役会で決定がなされたときは、その内容を取締役会議事録に記載しなければなりません(会社法369条3項)。

書式「定時株主総会議事録」

※「議題」と「議案」

議題と間違いやすい言葉として、「議案」というものがあります。議題とは、株主総会で討議する抽象的な題目のことをいいます。これに対して、「議案」とは、株主総会で決議を行う具体的な提案のことをいいます。この説明だと、いまいちピンとこない方もいると思うので、具体例をあげてみましょう。例えば、次の株主総会でAを取締役に選任しようとする場合、「取締役選任の件」が議題、「Aを取締役に選任する件」が議案になります。

取締役は、原則として、株主総会の当日までに議案を決めておけばいいとされています。但し、後述する書面投票制度・電子投票制度を採用する場合には、議題と併せて議案を決定して(会社法298条1項5号、会社法施行規則63条3号イ)、株主に送る株主総会参考資料に記載しなければなりません(会社法施行規則73条1項1号)。また書面投票制度・電子投票制度を採用しない場合でも、株式会社にとって重要な一定の事項を議題とする場合には、議案の概要を決定しておかなければなりません(会社法298条1項5号、会社法施行規則63条7号)。

第3 株主に通知する

1 通知の手続の概要

株主総会で行うことが決まったら、その内容を株主に通知することになります。もっとも株主としては、突然「株主総会を開催します。」と言われても困りますし、何をするのかが分からなければ準備をすることもできません。そこで、株主総会を開催するには、原則として、株主総会の日から一定期間前までに、書面または電磁的方法によって通知しなければならないことにしました(会社法299条1項)。この通知の期限は、株式会社の種類や決定事項の内容によって異なりますが、以下の表の通りです。

非公開会社 公開会社
取締役会なし 取締役会あり
書面や電磁的方法による議決権行使あり 2週間前まで 2週間前まで
書面や電磁的方法による議決権行使なし 1週間前まで
但し、定款で短縮可
1週間前まで
※招集通知が省略可能な場合

招集通知が必要とされているのは、株主総会の開催について正しい情報を株主にキチンと伝えるためです。したがって、株主全員の同意がある場合には、招集通知を省略することができます(会社法300条本文)。代表的な例は、発行済株式のすべてを1人または身内で保有している場合です。但し、書面や電磁的方法による議決権行使を認める場合には、招集通知の省略をすることができません(会社法300条但書)

2 招集通知の内容

「株主総会を開催します。」と言われても、「いつ」「どこで」開催するのかが分からなければ、株主としては出席することができません。また株主が、「どのような目的で」株主総会が開催されるのかを事前に知ることができなければ、株主総会の目的事項について十分検討をした上で議決権を行使することができません。そこで、会社法は、上記取締役会で決定した事項を、招集通知に記載しなければならないことにしました(会社法299条4項)。

招集通知の記載方法について、法律上の定めはありません。もっとも、招集通知は、株主が議決権を行使するかの検討を行う上で重要な資料ですので、分かりやすい記載になるようにしましょう。特に、上記で説明した「議案の概要」の記載が求められる場合(会社法299条4項、298条1項5号、会社法施行規則63条7号)には注意が必要です。なお別途「株主総会参考書類」を作成する場合には、招集通知自体への記載は省略できます(会社法施行規則73条4項)。

また原則として、取締役または取締役会は、事業報告、計算書類などを株主に提供しなければなりません(会社法437条、438条1項)。実務上は、招集通知の際にも併せて提供するのが一般的です。

書式「定時株主総会招集通知」

※書面投票制度・電子投票制度

株主総会の決議は、原則として、株主総会のその場で投票や挙手などの方法により行われています。そうすると、株主総会に出席することができなかった株主の意思は全く反映されることがないことになります。このような不都合を避けるため、現在は書面または電磁的方法による議決権行使が認められています。これを「書面投票制度」「電子投票制度」と呼びます。

書面投票制度または電子投票制度を採用するかは、取締役または取締役会の判断に委ねられます(会社法298条1項参照)。但し、議決権を有する株主の数が1000人以上の株式会社では、書面投票制度が義務づけられています(会社法300条2項)。

書面投票制度または電子投票制度を採用した場合には、招集通知にその旨を記載しなければなりません(会社法299条4項、298条1項3号4号)。また、招集通知の際、議決権行使の参考となる書類の提供も必要となります(会社法301条1項、302条1項)。

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