最二小判H26.1.30(損害賠償請求事件)

2015年08月25日

平成26年1月30日最高裁第一小法廷判決(平24(受)1600号)

1. 事案の概要

本件は、株式会社Aの株主XがA社の代表取締役ないし取締役であったYらに対して提起した株主代表訴訟です。
Xは、A社の完全子会社であるB株式会社において不適切な在庫処理が行われていたのに、Yらが適切な対応をしなかったことが善管注意義務違反及び忠実義務違反にあたると主張し、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)267条3項に基づき、会社が受けた損害の賠償と、年6分の遅延損害金の支払を求めました。
Yらの責任について争う旨の論旨が上告受理決定によって排除されたため、上告審での実質的な争点は、商法266条1項5号の遅延損害金の利率と損害賠償債務が履行遅滞となる時期の2点です。

2. 判決要旨

?遅延損害金の利率
最高裁は、商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は、取締役が任務を怠ったことによって生じる債務不履行責任ですが、法によってその内容が加重された特殊な責任であって、商行為である取締役と会社の委任契約上の債務が単にその態様を変えたものであるということはできないと判断しました。この判断は、従前の最高裁の立場を確認したものといえるでしょう。そのうえで、同号に基づく損害賠償債務は商行為によって生じたものでないため、その遅延損害金の利率は、商法に基づく年6分ではなく、民法に基づく年5分であるとしました。
?損害賠償債務が履行遅滞となる時期
商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は、不法行為責任ではなく期限の定めのない債務であるとして、民法412条3項によって履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると判断しました。

3. 実務に与える影響

本判決は商法266条1項5号についての判断ですが、現行の会社法で会社に対する損害賠償責任を規定した423条1項についても同様に妥当すると考えられます。
本判決の判断は特に目新しいものとはいえませんが、取締役の会社に対する責任について、遅延損害金の利率、履行遅滞となる時期について明確に述べていますので、会社法423条1項の責任追及をする場合には、本判例に基づいて利率・履行遅滞時期を決定することになるでしょう。

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