最二小判H26.2.14(遺産確認、建物明渡等請求事件)
2015年08月25日
平成26年2月14日最高裁第二小法廷判決(平23(受)603号)
1. 事案の概要
被相続人Aは昭和28年1月26日に死亡しました(なお、相続が起きてから判決まで長い年月が経過していることから、相続人が死亡するなどして事実関係が複雑になっています。争点に関係のない部分は簡略化して説明します。)。共同相続人としてXら、Yら、Eらがおり、Xらは、YらとEらを被告として遺産確認の訴えを提起しました。ところが、訴訟係属中に、Eらは自己の相続分の全部を他の共同相続人に譲渡していたことがわかりました。そこで、Xらは、Eらに対する訴えのみを取り下げました。
2. 判決要旨
争点を明らかにするため、まず原審の判断を紹介します。原審の名古屋高裁は以下のように判示しました。すなわち、遺産確認の訴えは、共同相続人全員が当事者として関与することが必要な固有必要的共同訴訟であるため、共同相続人の一部であるEらに対する訴えの取下げは効力を生じません。それにもかかわらず、Eらに対する訴えの取下げを有効とした一審の判断は手続違反があるという判示です。
これに対して、最高裁はまず遺産確認の訴えについて、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟であると認定しました。これは、従前からの立場を確認したものです。
そのうえで、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者(Eら)は、その後の遺産分割審判の手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないので、Xら・YらとEらとの間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要性はありません。そうすると、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡したEらは、遺産確認の訴えの当事者適格を有しない判断しました。
3. 実務に与える影響
本判例は、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと判示しました。
本判例では訴訟係属中にEらが自己の相続分の全部を譲渡していた事実が発覚し、訴えの取下げという形で問題となりましたが、この判断の射程は訴え提起前に被告を誰にすべきかという部分にも及ぶと考えられます。すなわち、訴え提起前に自己の相続分の全部を譲渡した相続人がいた場合には、原告として遺産確認の訴えを提起するときに、その者を被告にする必要はないということです。