最二小判H26.2.25(共有物分割請求事件)
2015年08月25日
平成26年2月25日最高裁第二小法廷判決(平23(受)2250号)
1. 事案の概要
被相続人Aは平成17年9月30日に死亡しました。相続人はXら・Yの4人です。Aの相続財産には株式、投資信託受益権、個人向け国債が含まれており、これらを各持分4分の1の割合で共有する遺産分割審判がなされ、確定しています。その後、共同相続人であるXらが共同相続人Yに対して共有物分割を求めて提訴しました。
預金債権などの可分債権は、遺産分割手続を経ることなく法定相続分に従って相続人が権利を取得します。これと同様の扱いが株式、投資信託受益権、個人向け国債についても妥当し当然に分割されるのではないかという点が、本判決の争点です。
2. 判決要旨
結論として、株式、投資信託受益権、個人向け国債3つとも相続分に応じて当然に分割されるものではないと判断されました。
?株式
株式は、株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し、株主は、株主たる地位に基づいて、剰余金を受ける権利や残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権などを有しています。このような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らせば、共同相続された株式は、相続分に応じて当然に分割されるものではないと判断しました。
?投資信託受益権
投資信託受益権は、法令上、信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権等の委託者に対する監督的機能を有する権利が規定されており、可分給付を目的とする権利でないものが含まれています。このような投資信託受益権に含まれる権利の内容及び性質に照らせば、共同相続された投資信託受益権は、相続分に応じて当然に分割されるものではないと判断しました。
?個人向け国債
本件の個人向け国債は、法令上、一定額をもって権利の単位が定められ、1単位未満での権利行使が予定されていません。このような個人向け国債の内容及び性質に照らせば、共同相続された個人向け国債は、相続分に応じて当然に分割されるものではないと判断しました。
3. 実務に与える影響
遺産分割では、特別受益や寄与分が考慮されます。本判決の原審のように、株式等は相続により当然に分割されると考えると、特別受益や寄与分の有無とは関係なく、法定相続分に従って機械的に株式等が分割されます。しかし、本判決によってその考え方は否定されました。本判決のように株式等は相続分に応じて当然に分割されるものではなく、遺産分割を必要だとすると、株式等を分割するに際し、特別受益や寄与分が考慮されることになるのです。
また、本判決の立場だと、共同相続人の一人が他の共同相続人に代償金を支払って全株式を取得する遺産分割も可能になります。