最二小判H26.3.14(遺留分減殺請求事件)

2015年08月25日

平成26年3月14日最高裁第二小法廷判決(平25(受)1420号)

1. 事案の概要

A(男)には妻XとYら5人の子供がいました。そして、Aはすべての財産をYに相続させる旨の遺言を残し、平成20年10月22日に死亡しました。Xは、Aの死亡時にYに対し遺留分減殺請求できることを知っていました。
しかし、Xは(後見開始の審判を受けてはいませんでしたが)精神障害を患っている状況にあり、自分で遺留分減殺請求をすることが難しい状態でした。そこで、平成21年8月5日にXの後見開始の審判申立てをし、平成22年4月24日、Xについて後見を開始し、B弁護士を成年後見人に選任する審判がなされました。そして、B弁護士は、平成22年4月29日に、Xの成年後見人としてYに対して遺留分減殺請求の意思表示をしました。
これに対して、YはXの遺留分減殺請求権は時効消滅している(民法1042条)と主張して争いました。争点は、民法158条1項類推適用の可否です。

2. 判決要旨

まず、最高裁は、民法158条1項の趣旨を、成年後見人等が法定代理人を有しないにもかかわらず時効の完成を認めるのは成年後見人等に酷であるとして、成年後見人等を保護することにあると認定しました。
そのうえで、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠いているが、まだ後見開始の審判を受けていない者は、民法158条1項にいう「成年被後見人」にはあたらないけれど、成年後見人と同様に保護する必要性があると判断しました。そして、上記の者について後見審判開始された場合に民法158条1項を類推適用しても、時効を援用しようとする者の予見可能性を不当に奪うとはいえないこともあるとして、申立てがされた時期、状況によっては、民法158条1項の類推適用を認めることができると判断しました。
本件では、Xの後見開始審判の申立てがされたのが遺留分減殺請求の1年の時効期間満了前であることから、民法158条1項の類推適用を認め、法定代理人が就職した時から6ヶ月を経過するまでは、時効が完成しないとしました。

3. 実務に与える影響

本判決を一言で説明すると、認知症などの重い精神障害がある場合は、後見人が就任してから6ヶ月は遺留分減殺請求ができる場合があるということです。
ただし、注意してもらいたいのは、本判決は遺留分減殺請求の1年の時効期間満了の平成21年10月22日より前の平成21年8月5日に後見開始審判の申立てをしているということです。仮に後見開始審判の申立てが時効期間経過後だったならば民法158条1項の類推適用は認められなかった可能性が高いと言えるでしょう。
ですので、このような事案の場合は、後見人の就任から6ヶ月は遺留分減殺請求ができると油断せずに、まずは迅速に後見開始審判の申立てをすることが必要であることに注意が必要です。

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