最判平成25年4月16日(損害賠償請求事件)~弁護士の説明義務

2015年08月25日

1. 事案の概要

本件は、Aが、債務整理を依頼したY弁護士の説明が不十分だったとして、Yに対して、慰謝料等の支払を求めた事案です。
AとYは、消費者金融5社に対する債務整理を目的とする委任契約を締結しました。Yは、消費者金融5社に対して、過払い金の返還を請求したり、元本債務の一部減額という方法での和解を提案したりしました。その結果、3社から過払い金の返還を受け、その過払い金の一部を原資として他の1社と和解を成立させました。Yは、Aに対して、和解が成立しなかった残りの1社については、そのまま放置して当該債務に係る債権の消滅時効の完成を待つ方針(以下、「時効待ち方針」という。)を採るつもりであることを説明しました。
その後、Aは、Yの債務整理に不安を抱き、Yを解任しました。Aが、改めて別の代理人に債務整理の委任をしたところ、最後の1社とも和解が成立しました。
そこでAは、Yの債務整理の方針についての説明義務を怠ったとして、債務不履行に基づく損害賠償を求める訴えを提起しました。なお第1審係属中にAが死亡したため、妻Xが訴訟承継している。

2. 判決要旨

最高裁は、Yは「委任契約に基づく善管注意義務の一環として、時効待ち方針を採るのであれば、Aに対し、時効待ち方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに、回収した過払金をもって…債務を弁済するという選択肢があることも説明すべき義務を負っていた」として、Yの説明義務違反を認めました。その背景として、次のような事情があったことを認定しています。

  1. ①時効待ち方針には、債務整理の最終的な解決が遅延するという不利益がある
  2. ②消費者金融が残債権の回収を断念し、消滅時効が完成することを期待し得る合理的な根拠がなく、提訴される可能性があった
  3. ③一旦提訴されると遅延損害金も含めて敗訴判決を受ける公算が高いというリスクがあった
  4. ④他の消費者金融から回収した過払い金で残債無を弁済する方法によって、最終的な解決を図ることも現実的な選択肢として十分に考えられた

3. 実務に与える影響

本判決は、弁護士の説明義務について初めて判断したものです。事例判例ではありますが、依頼者に重大な影響を及ぼす方針を採用するに際しては、依頼者がその方針を十分理解してその当否を判断できるように、多角的かつ丁寧な説明が求められることを示した点で、実務上重要な意義があります。なお、補足意見で、田原裁判官が、時効待ち方針は原則として許されない旨を指摘している点にも注目すべきでしょう。

以上

まずは弁護士事務所へお気軽にご相談ください!

  • さいたま大宮 048-662-8066 対応時間.9:00~21:00
  • 上野御徒町 03-5826-8911 対応時間.9:00~21:00

法律相談は、すべて当事務所にお越しいただいた上で実施いたします。
電話での法律相談やメールでの法律相談はいたしかねますので、あらかじめご了承ください。
また、初回の法律相談のお申し込みは、すべて、お電話またはご相談申込フォームからお願いいたします。

ページ先頭へ