最判平成25年1月22日(賃料減額請求本訴、地代等支払請求反訴事件) ~借地借家法11条の類推適用の可否
2015年08月25日
1. 事案の概要
本件は、ゴルフ場に利用されている複数の土地(以下、まとめて「本件土地」という。)の地上権設定契約及び賃貸借契約設定契約に関して、その地代及び賃料の減額について争われた事案です(以下、X・Yの請求の一部は省略する。)。
昭和63年7月、本件土地を所有するYは、Aとの間で、ゴルフ場経営を目的とする地上権設定契約及び賃貸借契約を締結しました。
その後、上記契約に基づく地上権者及び賃借人たる地位は、転々譲渡されました。平成18年9月、Xは、Yの承諾を得て、本件土地の地上権者及び賃借人たる地位を取得しました。それ以来、Xは、本件土地を利用してゴルフ場を経営しています。
平成19年3月、Xは、Yに対して、本件土地の地代及び賃料について減額の意思表示をしました。その後、Xは、Yに対して、減額された地代及び賃料の確認を求めて訴えを提起しました。地代及び賃料減額の根拠として、Xは①借地借家法11条1項と②事情変更の原則(民法1条2項)を主張しています。これに対して、Yは、Xに対して、未払い分の地代及び賃料の支払いを求めました。
2. 判決要旨
最高裁は、借地借家法は、「建物の所有を目的とする土地の利用関係を長期にわたって安定的に維持する」趣旨であるから、建物所有を契約の目的としておらず、かつ「建物の所有と関連するような態様で使用されていることもうかがわれない」本件においては、借地借家法11条を類推適用して地代及び賃料を減額することはできないと判示しました。
その結果、Xの請求は棄却され、Yの請求のみが認容されました。なお、Xの事情変更の原則の主張も、これを基礎付ける事情が認められないとして退けています。
3. 実務に与える影響
本判決は事例判例に過ぎませんので、最高裁が、一般論として、借地借家法11条の類推適用が認められるのか、認められるとしてどのような場合に、どの範囲で認められるのか(1項のみなのか、2項3項も含むのか)について明らかにしたものではありません。この点、過去に、当該契約の土地利用の目的から建物所有が契約の主たる目的だと認められる場合には、借地借家法の適用があるとした判例があります(最判昭和42年12月5日)。この判例と本判決を踏まえると、借地借家法の類推適用の余地があるのは、①建物所有が契約の従たる目的の場合と、②契約の目的ではないが借地人が土地上の建物を所有する場合だと考えられます。具体的な要件や適用範囲については、今後の学説・実務の課題と言えるでしょう。
以上