最決平成25年3月28日(間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件)~面会交流と間接強制

2015年08月25日

1. 事案の概要

本件は、元夫が、娘との面会交流の実施を拒む元妻に対して、間接強制を求めた事案です。
X男とY女は、平成16年5月に婚姻し、平成18年1月に長女Aが誕生しました。平成22年11月、X男とY女は離婚をし、Y女がAの親権者になりました。
平成24年5月、Y女はX男がAと面会交流をすることを許さなければならないとする審判がなされ、同年6月に確定しました。その審判では、面会交流の方法として、具体的には以下のようなことが定められました。

  1. ①月1回、毎月第2土曜日の午前10時~午後4時、Aの福祉を考慮してX男の自宅以外でX男が定めた場所で面会交流を行う
  2. ②X男及びY女は、Y女の自宅以外の場所でAを引き渡す
    引渡場所は、当事者間の協議が調わないときは、所定の駅改札口付近とする
    Y女は、X男とAとの面会交流に立ち会わない

上記審判の後、Y女は、XのAとの面会交流の求めに対して、Y女はAが拒絶しているとの理由で応じませんでした。そこでX男は、上記審判に基づき間接強制を求めました。

2. 判決要旨

最高裁は、面会交流に関する審判について、「性質上、間接強制をすることができないものではない。」とした上で、「監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる」と判示しました。
そして、本件においては、「面会交流の日時、各回の面会交流時間の長さ及び子の引渡しの方法の定めにより抗告人がすべき給付の特定に欠けるところはないといえるから、本件審判に基づき間接強制決定をすることができる。」としました。

3. 実務に与える影響

本決定は、審判で面会交流の給付の内容が具体的に定められている場合には、裁判所は審判に基づき間接強制決定をすることができると判示した点に大きな意義があります。今後、監護親が面会交流の求めに応じない場合に備えるのであれば、少なくとも、本決定で列挙された3つの要素を審判事項で明示しておく必要があるでしょう。
なお実務では、本件のY女のように、子供が拒絶しているとして、監護親が面会交流の実施に応じないことがあります。この点につき本決定は、裁判所は子供の心情に十分配慮して面会交流に関する審判を行っている以上、後に子供が拒絶していたとしても、間接強制を否定する理由にはならない旨を判示しています。言い換えれば、子供が嫌がっているとしても、それだけでは面会交流の実施を拒む理由にはならないことになります。もし子供が面会交流を拒絶しているのであれば、監護親は、面会交流に関する調停・審判をやり直すしかありません。本判決は、この点について判示した点にも注目すべきでしょう。

以上

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