果汁たっぷりではなく、果汁「感」がたっぷり
2018年03月20日
阿部・楢原法律事務所、代表弁護士の阿部です。
先日、駅の自動販売機で『果汁感たっぷり』というジュースを見つけました。
「果汁」たっぷりではなく、「果汁感」がたっぷり・・・。
絶妙な言い回しですよねw 決して嘘はついていない。
この「感」一文字を入れる事でどれだけ規制をかいくぐり、多大な努力をしたのだろうな、と私は思いを馳せました。
「景品表示法」という、誇大広告を禁止する法律があります。
そしてこの景品表示法の要請を受けて、各業界団体が「公正競争規約」というのを定めています。この「公正競争規約」は、チーズとか電化製品とか、多くの商品について存在します。
ジュースの業界で言えば、「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」というのが作られています。法律ではなく規約であって、業界団体の内部的なガイドラインみたいなものです。
それが結構面白いんです。
例えば、「果汁5%未満のジュース、あるいは無果汁のもの」は、”果実の絵を表示することはできない”など。
そして今回のジュースの表示については、”果汁30%くらいで「果汁たっぷり」とは書いてはいけない”という規約が当てはまります。(厳密に果汁何%以上という規定はないようなのですが、30%くらいではアウトだそうで。)
そこで考えられたのが「果汁感」なわけです。
『果汁感たっぷり』
あくまでも「感」がたっぷりなわけで、「果汁たっぷり」とは言っていない。だから、公正競争規約の規制にはひっかからないのです。
果汁はたっぷりではないが、果汁がたっぷりの様な感覚(?)が味わえるよ、と言う感じでしょうか(笑)
「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」は、他にも、果物をスライスした断面をパッケージ画像として使用するのは果汁100%飲料しかダメとか、果汁1%のジュースは”リアルではない”イラストでなければならないとか、興味深いものが色々あります。
そんな目で、コンビニやスーパーなどで買い物をすると、「この1%のジュースは、なるほどヘタクソな絵だな」と気づけたり、ちょっと楽しみが増えるかもしれません。
ただ、野菜ジュース系は、果実飲料等の公正競争規約の対象ではありません。
また、乳製品やお酒系も対象外。だから、いちごオレや、グレープフルーツサワーとかは、フルーツ断面の写真やイラストを使って問題ないんです。お茶も対象外なので、レモンティーにレモンの断面イラストをパッケージ表示させても大丈夫だったりします。
逆に言えば、乳製品やお酒について、パッケージの絵や写真を見て、フレッシュな果汁が沢山入っていると思ったから買っている人がいたら、成分表示を確認した方が良いかもしれませんね。