オリンピックとスポンサーの関係
2018年03月23日
阿部・楢原法律事務所、弁護士の小川です。
オリンピックで金メダル連覇したフィギュアスケートの羽生結弦選手。ファンから会場に羽生選手の大好きなプーさんのぬいぐるみを投げ込まれるのが恒例となっていますが、オリンピックではあまりに大量だったことが話題になりましたね。
また、羽生選手は、いつもプーさんのティッシュカバーをつけたティッシュボックスを持参していますが、オリンピックではケーキのみ(プーさんを外したようです)のカバーを持っていたことも話題になっていました。なぜプーさんがいなのかというメディアからの質問に対し、羽生選手はスポンサーの問題があったことを理由にあげました。そこで、オリンピックとスポンサーとの関係について調べてみました。
オリンピックにはオリンピック憲章というものがあり、オリンピックのシンボル、名称、旗、聖火、特定できる言葉等の知的財産権は、国際オリンピック委員会(IOC)に独占的に帰属しています。でも、スポンサーになればスポンサー料を支払う代わりに知的財産権の利用権が与えられます。オリンピック開催には莫大な費用がかかるため、スポンサー料は重要な収入源となっています。そうした仕組みを作ることによって、スポンサーとなった企業にとってもオリンピックを通じて自社を宣伝できるメリットがあります。
他方、公式スポンサーでないところがIOC等の権利者の許諾なしにオリンピックと関係するような宣伝をしてしまうことは、知的財産権の権利がないにも関わらず使用してしまうことになり、日本国内では商標法や不正競争防止法に違反することになるため、場合によっては刑事罰を受ける可能性もあります。このようにしてスポンサー制度による知的財産権を保護し便乗広告を規制しているのです。
もっとも、その表現が直接的なものではない場合には、オリンピックを想起させるものかどうかの判断が難しいものです。そこで、JOCは、違法となる恐れがある事例を紹介して周知してもらおうとしています。ちなみに、みんなでオリンピックを盛り上げたい思いで飲食店が様々なキャンペーンを打ち出すことがありますが、「2020円キャンペーン」という表現も違法となる可能性のある例の中にありました。「2020年」という語呂の良さから「2020円キャンペーン」としただけで、オリンピックとは関係ないと思えますがいかがでしょう?結局、JOCはそれだけ便乗広告を懸念しているということなのでしょうね。