【中小企業支援】債権回収の事案
2015年11月06日
1. 事件の概要
依頼人は、設備関連の工事業を営む会社です。不動産開発業者である取引先から3件の設備工事を請け負い、いずれも工事も完成させました。しかし、取引先は、請負代金合計約6,000万円のうち3分の2を支払ったものの、残金については、支払期限を4か月経過しても一向に支払ってくれません。
2. 行った手続
まず、相手方(取引先)に対し、残金約1,800万円を2週間以内に支払うよう内容証明郵便にて請求しました。
相手方は、弁護士をつけるから待ってくれなどといい、対応を引き伸ばした挙げ句、資金繰りの悪化を理由に、支払を猶予するよう申し出ました。
そこで、請負残代金を回収するために、債権仮差押え命令を申し立てました。請負代金を請求する訴訟を提起してから強制執行をしたのでは、債権を回収できないおそれがあるため、直ちに相手方の財産を保全しておく必要があるからです。
相手方は不動産を所有していましたが、多額の抵当権が設定されており資産価値がありません。そこで、差押えの対象は、相手方の取引銀行らに対する預貯金としました。
そうしたところ、相手方から示談の申込みがあり、交渉の結果、残代金全額を分割払いすることで合意しました。さらに、頭金として相当額を支払ってもらうこと、公正証書作成することを条件として、仮差押えの申立てを取り下げました。
その後、公正証書のとおり、残代金はすべて支払われました。
3. 結果
示談によって、残代金全額を回収することができました。
企業は、銀行口座を差し押さえられると、通常の取引にも支障をきたす等、大きなダメージを受けます。そのため、仮差押えの申立てにより、相手方が不誠実な態度をあらためるケースはよく見られるのです。
仮差押え手続は債権回収手段として非常に有効ですが、専門知識を要します。取引先が売掛金などの債権を支払わない場合、弁護士に相談することをお勧めします。
4. 解決までの期間
最初の請求書を通知してから示談が成立するまで約5か月
5. 弁護士費用
約80万円