いわゆる「役員会」の議事録に記載すべき事項

第1 はじめに

株式会社には、株主によって構成される株主総会以外に、「取締役会」「監査役会」「委員会(指名委員会、監査委員会、報酬委員会)」(以下、3つをまとめて「役員会」)といったいわゆる「役員」によって構成される機関が設置されることがあります。「役員会」では、その権限の範囲内で意思決定を行われます。例えば、取締役会ではどのような業務を行うかの決定(会社法362条2項1号)や、監査役会では監査の方針や方法についての決定(会社法390条2項3号)などです。これらの意思決定は、株式会社や株主、その他第三者に対して重大な影響を及ぼすことがあるので、意思決定の内容が後日検証できるように、議事録の作成が義務づけられています(会社法369条1項、393条2項、412条3項参照)。

議事録に記載しなければならない事項は、会社法施行規則で細かく定められおり(会社法施行規則101条3項、109条3項、111条3項)、以下の事項を記載しなければならない点は株主総会議事録と共通します(詳しくはコラム「株主総会議事録に記載すべき事項」)。

① 「役員会」が開催された日時および場所

② 「役員会」の議事の経過の要領及びその結果

③ 会社法の規定に基づき述べられた意見または発言の内容の概要

④ 「役員会」の議長が存するときは、議長の氏名

また、取締役会の目的事項についての書面決議(会社法370条)や、「役員会」での報告の省略(会社法372条1項、395条、414条)の場合における、議事録の作成方法についても株主総会の場合と同様です。

他方で「役員会」は、コラム「会社の機関」でお話ししたとおり、株式会社のオーナーである株主に代わって、株式会社の運営を行う機関です。言い換えれば、「役員会」は、その職務について、株主総会と株主に対して責任ある立場にあると言えます。そこで「役員会」の議事録の作成には、株主総会議事録にはない特別な規制がなされています。以下、「役員会」の議事録を作成する上で、特に注意しなければならない点を説明します。

第2 「役員会」に共通する議事録作成上の注意事項

1 出席者の発言の要旨の記載に注意する

議場で出席者が行った発言の要旨を記載しなければならない、というのは株主総会議事録の場合と共通します。もっとも、記載の影響力という点では大きく異なる点があります。

株主は、「役員会」で具体的にどのようなことが審議されたのかは、議事録の閲覧・謄写請求というかたちで確認することができます(手続についてはコラム「各種書類の閲覧謄写請求」参照)。見方を変えれば、株主は、議事録の記載から、各役員がどのような考えで職務にあたっているのかを推認して、各役員としての適性を判断することになります。そうすると、役員としては、意見があるときはキチンと発言をして、その要旨が正確に議事録に記載されることが重要となります。役員の意見が、決議の結果とは反対である場合には、特に注意が必要です。反対した旨がキチンと記載されていないと賛成したものと推定され(会社法369条5項、393条4項、412条5項)、決議の結果株式会社に損害が発生したときに、任務懈怠に基づく損害賠償責任を負う可能性があるからです(会社法423条1項、3項3号)。

2 出席者の署名または記名押印が必要

株主総会議事録と異なり、「役員会」に出席した一定の役員には、議事録に署名または記名押印(電磁的記録をもって作成する場合にはいわゆる電子署名)をしなければなりません(会社法369条3項4項、393条2項3項、412条3項4項)。取締役会であれば取締役と監査役、監査役会であれば監査役、委員会であれば委員にこの署名義務が課されています。これは、「役員会」の議事録が、上記のとおり、参加した役員にとって法律上大きな意義を持つことがあるので、議事録の記載内容に間違いがないかをキチンと確認させることを目的としています。

第3 取締役会の議事録を作成する上での注意事項

1 特別な規定によって開催された取締役会の場合

取締役会の開催にあたっては、招集権限のある取締役(会社法366条1項但書)が、取締役会の招集手続を行うのが原則です。もっとも、会社法には、例外的に招集権限のない取締役(会社法366条2項3項)、株主(会社法367条1項3項)、監査役(383条2項3項)、委員(417条1項)、または執行役(会社法417条2項)により招集手続が行われることがあります。

また、通常の取締役会であれば、「議決に加わることができる取締役の過半数」が出席しなければ、決議を行うことができません(369条1項)。しかし、取締役が大勢いる場合には日程調整などの難儀があることから、一定の条件の下では、あらかじめ選定した一部の取締役(「特別取締役」)のみで取締役会を行うことも可能です(会社法373条1項)。

このような例外的な方法で取締役会が開催された場合には、その旨を議事録に記載しなければなりません。

2 決議事項について「特別の利害関係を有する取締役」がいる場合

会社法上、決議事項と「特別の利害関係を有する取締役」は、議決に参加することができず(会社法369条2項)、取締役会開催に必要な定足数の算定の基礎にもなりません(会社法369条1項)。「特別の利害関係」とは、株式会社と取締役との利害が相対立する場合のことをいいます。例えば、株式会社の財産を取締役に譲渡するケースが挙げられます。

このような会社法上の規制にしたがって、適法な議決がなされたことを示すために、議事録には「特別の利害関係を有する取締役」の氏名を記載する必要があります。

なお委員会においても、「特別の利害関係」に関する規定があり(会社法412条2項)、取締役会の場合と同様の議事録の記載が必要となります。

以上

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