民事再生手続の流れと債権回収

第1 はじめに

今回のコラムでは、会社が倒産した後の法的整理のうち、民事再生手続について説明していきます。

民事再生手続は、債務者の事業を再建し、再建された事業等から生じる収益・収入を債権者の弁済の原資とする再建型手続です。また、債務者自身が財産・事業の管理処分権や経営権を維持するDIP型の手続です。

第2 民事再生手続の流れ

1 民事再生開始の申立て

破産手続と同様、民事再生手続も申立てを受けて裁判所が開始決定をすることによって行われます(民事再生法21条1項)。債権者が申立てをすることもできますが(民事再生法21条2項)、破産手続とは異なり、民事再生手続は債務者が申立てをすることがほとんどです。なぜなら、民事再生手続は債務者の事業を継続することが前提となりますので、債務者の意思に反して手続を進めることは実質的に不可能だからです。

2 保全処分・監督委員選任

民事再生手続の申立てと同時に、保全処分の申立てをするのが通常です。保全処分は、債務者の資産隠匿や債権者の個別執行を防止するために行われます。

保全処分が発令されると、原則として債務者は債権者に対する弁済ができなくなります。

また、保全処分の発令と一緒に裁判所が監督委員を選任することも多いです。監督委員は債務者の行動を監督することを職務とし、通常は弁護士が選任されます。

3 債権者説明会

東京地裁の運用ですと、原則として申立てから1週間以内に、債権者に対する説明会が開催されます。

債権者説明会は、債務者の主催で行われるものです。参加するにあたっては、以下のポイントに注意してください。

① 取引先の現状・今後の方針

まず、取引先の現在の財産状況をチェックします。そのうえで、無謀な計画を立てていないかに注意して説明を聞きましょう。スポンサーがついているのか、自力再生なのかの点は特に重要です。

② 再生した場合・破産した場合のそれぞれの配当率の見込み

これらの説明を聞き、場合によっては債権者として破産手続の申立てをすることも考えなければなりません。

③ 少額債権としての弁済額

さきほど、民事再生手続の申立てがされると保全処分がなされることが通常であると説明しました。保全処分がなされると債権者への弁済は禁止されるわけですが、その例外として、少額の債権しかない債権者には支払いが可能であることがあります。
たとえば、東京地裁の運用では、特に申立て人からの要望がない限り、10万円以下の少額債権については、保全処分の対象から除外しています。この金額は手続によって異なりますので、説明会で金額を確認しておくことが必要です。

4 民事再生手続開始決定と

その後、①支払不能や債務超過などの破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがあるとき、または②事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済できないときには、民事再生手続開始決定がなされます(民事再生法33条1項)。

5 債権者集会

債務者が再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所主催の債権者集会が招集されます。この集会は、再生計画案を議論する場ではなく、案に賛成か反対かを投票するためのものです。

議決権のある債権者の過半数、かつ、債権額の2分の1以上の賛成が得られると、再生計画は可決されます。

その後、再生計画の内容や手続に違法な点がなければ、再生計画は裁判所に認可され、その計画に従って債権者へ弁済されます。

第4 債権者がすべき対応

1 民事再生手続申立前に発生した債権

民事再生申立前に発生した、無担保の債権を「再生債権」と呼びます。再生債権は、原則として再生計画による支払いしか受けられません(民事再生法85条1項)。また、再生計画による債権カットの対象になるのは、この再生債権のみです。

再生債権を有している場合は、破産の場合と同じように、期間内に債権届出書を提出しなければなりません。また、再生債権の債権者が債務者に対して債務を負担している場合には、相殺ができることも破産債権と同じです。ただし、破産手続と異なり、債権届出期間内に相殺の意思表示をしないと、その後の相殺は認められません(民事再生法92条1項)ので、この点は注意が必要です。

2 民事再生手続申立後に発生した債権

民事再生申立後に発生した、無担保の債権を「共益債権」と呼びます。共益債権は、民事再生計画とは関係なく全額の支払いを受けることができます。

3 担保権

担保権は、民事再生手続では別除権と呼ばれます。民事再生手続においても、手続とは関係なく担保権の行使が可能です。ただ、例外的に担保権の行使が制限される場合があります。

まず一つ目が、取引先との間で担保権を実行しない代わりに分割で金銭の支払いを受ける合意をしたときです。さきほど債務者がすべきことで説明したことですね。

二つ目が、取引先から担保権消滅請求(民事再生法148条)をされたときです。取引先から担保権消滅請求をされると、自らが有している担保権はなくなりますが、代わりに担保目的物の時価相当額を一括して支払ってもらえます。時価相当額に納得がいかないときは、裁判所に対して時価決定の請求をすることもできます(民事再生法149条)。

三つ目が、裁判所から担保権実行手続の中止命令(民事再生法31条)が出されたときです。もっとも、この中止命令は、取引先が担保権を実行されないよう債権者と合意をするための時間的余裕を作り出すことが目的ですので、一定期間担保権の実行ができなくなるにすぎません。

4 再生計画に従って支払いを受ける

債権者集会で再生計画について賛成か反対かの決議が行われます。債権者集会は議論をする場所ではないので、出席してもあまり意味がありませんから、書面投票ですますことがほとんどです。

そして、再生計画案が可決された場合には、案に従って支払いを受けることになります。再生計画が可決されても、取引先のその後の業績によっては再生計画を履行できないということもよくあります。ですから、再生計画案に基づいて実際に入金がなされるまでは油断できません。

まずは弁護士事務所へお気軽にご相談ください!

  • さいたま大宮 048-662-8066 対応時間.9:00~21:00
  • 上野御徒町 03-5826-8911 対応時間.9:00~21:00

法律相談は、すべて当事務所にお越しいただいた上で実施いたします。
電話での法律相談やメールでの法律相談はいたしかねますので、あらかじめご了承ください。
また、初回の法律相談のお申し込みは、すべて、お電話またはご相談申込フォームからお願いいたします。

ページ先頭へ