Q4 宿直をする仕事では残業代は請求できないの?
埼玉県在住 H.Tさん
社員寮の管理人の仕事をしています。昼間は敷地内の清掃などを行い、夜は宿直勤務となります。宿直勤務は残業として扱われないといわれているのですが、宿直中に事故などがあって対応したときにも時間外割増賃金を請求することはできないのでしょうか。
Answer:緊急事態により、具体的業務をする必要性が発生した場合には,時間外労働・深夜労働が発生したとして割増賃金を請求できると考えられます。
1 「監視労働」とは
使用者は,寮の宿直業務などの「監視労働」と呼ばれる業務に関して,労働基準法41条3号に基づき,労働基準監督署長による労働時間規制適用除外の許可を得ていれば,残業として扱わなくて良いこととなり,時間外割増賃金が支払われないこととなります。
「監視労働」とは,一定の部署にあって監視するのを本来の業務とし,常態として身体又は精神的緊張の少ない労働をいいます(「断続的労働」(例:役員付運転手)も同じように適用除外がありますが今回は省略します)。
この監視労働従事者に対する適用除外の許可の要件は,以下の4つです。
- ① 常態として,ほとんど労働する必要のない勤務のみを認めるものであり,定時的巡視,緊急の文書または電話の収受,非常事態に備えての待機等を目的とするものであるあること。原則として,通常の労働の継続は認められない。
- ② 宿直または日直の勤務に対して相当の手当が支給されること。
- ③ 許可の対象となる宿直または日直の勤務回数については,宿直勤務については,週1回,日直勤務については,月1 回を限度とすること。
- ④ 宿直勤務については,相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。
2 それでも請求できる場合
もっとも,宿直・日直勤務としての許可を得ていたとしても,一定の宿直手当の支払いが許可の要件となっています。そのため,これすら支払われていない場合には,寮の管理人である相談者のH.Tさんは,宿直手当の請求をすることができます。
さらに,宿直手当が払われていたとしても,緊急事態等により具体的業務が発生した場合には,時間外労働・深夜労働が発生したとして割増賃金を請求できると考えられます。 H.Tさんは,事故の対応という具体的業務を行っているため,割増賃金を請求することができます。