Q5 管理職でも残業代は請求できるの?
東京都在住 T.Mさん
4月に係長に昇進しましたが,給料が減ってしまいました。その理由は,今まで払われていた残業代が、一律月1万円の係長手当と引き換えに払われなくなったことです。残業は以前より多くなっているのに、この待遇は納得できません。残業代支払いの請求はできないのでしょうか。
Answer:そのような待遇しか得てないのであれば,残業代支払い請求を行うことができます。
1 「管理監督者」とは
労働基準法41条2号の「管理監督者」であれば,残業代は支払われなくても良いこととされます。しかし,この管理監督者に当たるかについてはいくつかの要件によって判断され,その判断に争いになることが多いです。最近では,大手ファーストフード店の店長が管理監督者には当たらないとして,会社が店長に対して残業代を支払うことを命じる判決が下されました(東京地裁平成20年1月28日判決)。
「管理監督者」とは,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい,名称にとらわれず実態に即し判断すべきとされています。そして,管理監督者に当たるについては,おおむね以下の3つの要件に即して判断されます。
- ① 事業主の経営に関する決定に参画し,労務管理に関する指揮管理監督権限を有していること,
- ② 自己の出退勤をはじめとして労働時間について裁量権を有していること,
- ③ 特別手当などによりその地位にふさわしい待遇を受けていること。
2 ○○長手当
本件で問題となっている係長については,一般的に管理監督者とされるものではありません。また,一律1万円の係長手当というのもその管理監督者としてふさわしい地位とはいえないでしょう(要件③)。そのため,本件のような場合には,残業代支払請求が認められる可能性が高いと考えられます。