残業時間の算定方法
1分単位の残業時間まで計算しなければいけないのか?
法定労働時間を超える残業について,残業時間の端数を1残業ごとに切り捨てることは違法です。そのため,分単位の端数が生じてもそれをそのまま1賃金計算期間ごとに集計すべきです。ただし,この集計の結果につき30分未満の端数を切り捨て,30分以上の端数を1時間に切り上げることは,常に労働者の不利になるものではなく,事務処理の簡易化を目的とした者と認められるので,労働基準法違反としては取り扱われないとされています。
休憩時間や待機時間は労働時間に含まれるのか?
(休憩時間)
使用者は,休憩時間を従業員に自由に利用させなければなりません(労基法34条3項。休憩時間利用自由利用の原則)。休憩時間とは,単に作業に従事しない手持ち時間を含まず,労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間のことであり,その他の拘束時間は労働時間に含まれます(通達)。そして,労働時間とは,労働者が使用者に労務を提供し,その指揮命令に現実に服している時間を言います(通達)。
例えば,会社が昼休みに電話当番をさせたり,来客に備えるために待機させて利することは,手持ち時間となり,労働時間とされます。もっとも,たまたま来客があって,それに対応させることは労働時間になりません。黙示の業務命令は,昼休みに労働をしなくてはならない業務上の必要性や緊急性が認められる場合や,昼休みの業務が慢性化・義務化している場合などに認められることとなります。
つまり,昼休みの労働に対して賃料が支払われるかは,具体的な業務命令があったか,黙示的な業務命令があったかにかかってきます。
※会社が指示していない取引先との接待や,ゴルフコンペに参加した時間は労働時間になりません。始業前の体操については,使用者が参加を強制している場合には労働時間となり,自由参加とされている場合には労働時間とはなりません。
ケーススタディ④(東京都在住 D・I さん)
私は,エレベーターの保守・点検の仕事をしています。終業は18時と決まっていますが,終業時間の間際でも,緊急の呼び出しを受けて,会社から1時間ほどかかる場所まで出動してエレベーターの修理をすることがあります。仕事にかかる時間はだいたい3時間ほどですが,その後道具を置きにまた会社に戻らなければなりません。結局,会社と現場は往復2時間かかるので,1回の出動に要する時間は計5時間となります。
しかし,会社は移動に要する時間を除き,修理にかかる時間の3時間しか,時間外労働と計算してくれません。何とかならないものでしょうか。