フランチャイズ契約を締結するときの注意点

第1 はじめに

フランチャイズ契約というのは、それ自体規定した法律がありません。「フランチャイズ契約」とは何かを定める法律がないのですから、その契約内容は全て当事者の合意によって定めなければなりません。したがって、フランチャイズ契約を締結するにあたっては、どのような内容の契約をするのか、ということが大変重要となります、このコラムでは、契約当事者が注意しておくべき主な契約条項について説明します。フランチャイズ契約の契約条項に関連して注意すべき点については、適宜指摘する他のコラムで詳しく説明します。
※参考:ひな形「フランチャイズ契約書」

さてコラム「「フランチャイズ契約」とは」で、フランチャイズ契約とは、「本部が加盟店に対して一定の内容の「特権」を与えて、その対価を受け取ることを内容とする契約」と説明しました。したがって、フランチャイズ契約の締結にあたっては、①加盟店はどのような「特権」を得て、事業を行うことができるのか②加盟店は、本部に対して、対価およびその他費用(以下、まとめて「対価等」という。)としてどのくらいの金銭を支払わなければならないのか、という点が大変重要なポイントになります。

ここにいう①「特権」に含まれる事項というのは、主に「本部の商標等を使用する権利」、「本部の経営ノウハウを利用して営業する権利」、「本部の指導・援助を継続的に受ける権利」の大きく分けて3つです。したがって、それぞれの権利の具体的な内容がどのようなものなのか、権利の行使に条件・制限はあるのか、ということは必ず確認しておく必要があります。

一方で、②「対価等」の支払いが必要となりうる場面というのは、大きく分けて契約締結時、契約期間中(いわゆる「ロイヤルティ」の問題)、契約終了時の3つです。お金をめぐる事項はトラブルに発展しやすいので、これも必ず確認しておく必要があります。

第2 ①「特権」に関する事項

1 「本部の商標等を使用する権利」

取り扱う商品やサービス(以下、「役務」という。)を他の事業者のものと識別することができる標識、いわゆる「ブランド」を示すサービス・マークのことを法律上「商標」と呼んでいます(商標法2条1項)。フランチャイズ契約は、加盟店が、本部の商標やその他の標識がもつブランドイメージを利用できる点に1つの特徴があります。したがって、本部の商標等を加盟店が使用することを許諾する契約条項は必ず必要となります。

さて本部からすると、加盟店が本部の商標等を使用するということは、消費者から「加盟店の営業=本部の営業」と見られるおそれがあることを意味します。そうすると、本部としては、本部のブランドイメージを損なわないように商標等を使用して欲しいと望むと考えられます。そこで、本部は、本部の商標等の使用許諾に際して、その使用方法に一定の条件を定めるのが一般的です。例えば、「本部の指定する方法でのみ商標等を使用しなければならない」「商標の全部若しくは一部を改変し、又は商標等の信用を損なう形で使用してはならない」といった契約条項が考えられます。

2 「本部の経営ノウハウを利用して営業する権利」

(1) 経営ノウハウの提供に関する事項

本部の経営ノウハウを利用して営業を行うにあたっては、当然のことですが本部から加盟店に対して経営ノウハウが提供されなければなりません。したがって、経営ノウハウの提供方法に関する事項(研修を実施するのか、費用はどちらの負担か等)は契約書に記載しておく必要があります。トラブルになりやすい点については、コラム「ノウハウの提供方法」で詳しく説明します。

(2) 経営ノウハウの実施に関する事項

上記で触れたとおり、加盟店の営業は、本部の持つブランドイメージに影響を与えます。そうすると、本部としては、どの加盟店においても同様の商品・サービスが提供されて、ブランドイメージを保持したいと思うことでしょう。そこで、フランチャイズ契約の締結にあたっては、商品・サービスの提供に関する経営ノウハウの実施方法について契約条項を定めるのが一般的です。加盟店になろうとする者としても、本部の経営ノウハウの実施にどのような条件は付されているのかを確認するようにしましょう。代表的な事項としては以下のようなものが挙げられます。

  • 店舗の内外装、設備、看板、什器備品、装飾品等の配置およびその入手方法
  • ユニフォームの着用などの店舗運営方法
  • 商品、原料、事務用品、備品等調達方法
  • 店舗や商品の管理方法

(3) テリトリーの設定の有無に関する事項

経営ノウハウの実施に関連して、フランチャイズ契約締結時に店舗設置場所と営業地域を指定することがあります。これを一般的に「テリトリー制」と呼んでします。このようなテリトリー制を採用すると、加盟店の商圏が保証されるとともに、本部による効率的なフランチャイズ・システムの運用を図ることができます。もっとも、コンビニエンスストアなどのフランチャイズでは、テリトリー制を採用しない場合もあります。フランチャイズ契約の締結にあたっては、まずはテリトリー制を採用するのかを確認しましょう。

このテリトリー制を採用するとした場合には、加盟店の商圏の保証内容をどの程度なのかも確認する必要があります。具体的には、本部は当該営業地域内に他の加盟店や直営店を設置することができるのか、他の加盟店や直営店は当該営業区域内で営業、広告宣伝を行うことができるのか、といった事項です。

3 「本部の指導・援助を継続的に受ける権利」

時の経過によって、少しずつ個人の“クセ”や“慣れ”が出てきて、最初に教わったやり方は異なってくる、ということは業種を問わずよくあることだと思います。これはフランチャイズ契約においても同様で、本部が加盟店に対して何もしなければ、次第に加盟店が当初付与したノウハウとは異なる方法を行うことがあります。これは、統一的なブラインドイメージを保持したい本部としては非常に困る事態です。他方で、加盟店としても、与えられたノウハウを十分に活かすことができず、利益を出せないとなっては困ります。そこで、フランチャイズ契約では、契約締結後も継続して本部が加盟店に対して、指導や援助など一定の“関与”を行うのが一般的です。契約書においても、どのような頻度で、どのような指導・援助がなされるのかを明記しておくといいでしょう。この点についても、コラム「ノウハウの提供方法」で詳しく説明します。

第3 ②「対価等」に関する事項

1 契約締結時の対価等

(1) 初期費用の概要

加盟店となって独立開業を目指す者としては、フランチャイズ契約の締結にあたり、初期費用としてどの程度必要なのかは気になるところです。したがって、フランチャイズ契約書には、初期費用として加盟店が負担すべき金銭の内訳を明示する必要があります。具体的には、加盟金、保証金、宣伝広告費、研修費用、設備設置費用などが挙げられます。このうち代表的な加盟金と保証金について説明します。

(2) 加盟金について

加盟金とは、本部から加盟店に対して商標等や経営ノウハウを使用する権利を与えることの対価として、契約締結時に支払われる金銭のことをいいます。加盟金以外にも、権利金や入会金、分担金、フランチャイズ料とよばれることもあります。

この加盟金というのは、「商標等や経営ノウハウを使用する権利を与えること」以外にも、店舗の立地研究調査、店舗の内外装のデザイン、教育・研修などの開業準備支援、什器備品の調達などの対価も含まれるのが一般的です。ただし、加盟金の範囲が明確に決まっているわけではなく、上記に挙げた事項は加盟金とは別に徴収するケースもあります。本部としては、「加盟金」の名目で徴収する金銭の内訳を明らかにして、契約書への記載および加盟店への説明を行うようにしましょう。

なお加盟金は、下記の保証金とは異なり、フランチャイズ契約が終了しても返還されませんので注意してください。実務においては、加盟金を返還しない旨を契約書に明記するのが一般的です。

(3) 保証金について

保証金とは、契約期間中に加盟店が本部に対して負う金銭債務(未払いロイヤルティや損害賠償金)を担保するために、契約時に支払われる金銭のことをいいます。簡単に言えば、本部が加盟店の金銭未払いに備えて、あらかじめ交付してもらう「預かり金」のことです。不動産の賃貸借契約で言うところの「敷金」のようなものです。

本部は、借主の金銭債務の不履行がある場合には、この保証金から金銭債務相当額を回収することができます。このとき、借主が負う金銭債務のどの範囲を対象とするのか、保証金から回収を図るときどのような手続を経るのか、といった事項は、全て当事者の自由です。したがって、保証金に関しては、加盟店がいくら交付するのかだけでなく、本部が保証金から回収を図る場合に関する事項を契約書に明記しておく必要があります。

さらに保証金は、あくまで「預かり金」ですので、フランチャイズ契約終了時に残額があれば、本部は加盟店に対して残額を返還しなければなりません。この保証金の返還の時期や方法に関する事項も契約書に明記しておくといいでしょう。

2 ロイヤルティ

ロイヤルティとは、商標等や経営ノウハウの使用、経営の指導・援助、本部による広告宣伝などの対価として、定期的に支払われる金銭のことをいいます。本部に支払われる対価というでは上記の加盟金と同じですが、定期的に支払われるという点で異なります。不動産の賃貸借契約でいえば、権利金や礼金に相当するものが「加盟金」であり、毎月の賃料に相当するものが「ロイヤルティ」と考えていただければいいでしょう。

ロイヤルティは、加盟店が毎月支払い義務を負うものですから、その概要を契約時に必ず明らかにしなければなりません。具体的には、ロイヤルティの金額または算定方法、性質、支払時期および方法を契約書に明記する必要があります。詳しくは、コラム「ロイヤルティの算定・支払方法」で説明します。

3 契約終了時の対価等

フランチャイズ契約終了に伴う金銭トラブルが発生しやすいのが、契約期間の途中で契約関係が終了する場合です。このような場合、加盟店は本部に対して「違約金」や「解約一時金」(「解約金」)と呼ばれる金銭を支払わなければならないと定めている契約書が多いです。ここにいう「違約金」とは、加盟店に債務不履行が発生した場合に、本部に発生する損害額をあらかじめ定めたものだと考えられています(民法420条3項)。他方で、「解約一時金」とは、加盟店の都合で解約を申し入れる際に支払わなければならない金銭のことを言います。

もっとも、実務においては、これらの言葉は明確に区別して用いられているわけではありません。そして言葉の意味が曖昧であるがゆえに、トラブルになることも少なくありません。したがって、どのような場合に「違約金」などの支払い義務が発生するのか、その金額はどの程度なのかを契約書に明記しておくようにしましょう。

なお、どのような場合に契約が終了するのかについてもあらかじめ確認しておく必要があるでしょう。詳しくは、コラム「フランチャイズ契約が終了する場合」を参照してください。

以上

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