ロイヤリティの算定・支払方法

第1 はじめに

コラム「フランチャイズ契約を締結するときの注意点」で説明したとおり、ロイヤルティとは、本部の商標等や経営ノウハウの使用、経営の指導・援助、本部による広告宣伝などの対価として、定期的に支払われる金銭のことをいいます。たとえるなら、不動産の賃貸借契約でいうところの賃料のようなものです。

一般的に「ロイヤルティ」とは上記のように説明されていますが、実際のところ、「ロイヤルティ」を支払う目的やその内容は、ケースバイケースです。たとえば、上記の「本部による広告宣伝」の対価が、ロイヤルティに含まれている場合もあれば、ロイヤルティとは別に徴収される場合もあります。また、ロイヤルティの支払いの時期・方法、金額の変更の可否などについても、同様に各契約当事者間で定めることになっています。このようなロイヤルティに関する事項を契約書にきちんと定めて、当事者が共通認識を持っていないと、後日トラブルに発展するおそれがあります。実際に、「本部の言い分と加盟店の認識が違うのは、本部のロイヤルティに関する説明が不十分だからだ。」と争われることも少なくありません。

したがって、個々の契約において、ロイヤルティに関する契約条項をきちんと定めて、本部がその内容をきちんと説明することが重要となります。このコラムでは、フランチャイズ契約を締結するにあたって、どのようにしてロイヤルティの額を算定するのか、また算定したロイヤルティをどのようにして支払うのかについて説明します。

第2 ロイヤルティの算定について

ロイヤルティの算定方法としては、大別して定額制と歩合制の2つに分類できます。

1 定額制

定額制とは、あらかじめ一定の金額を設定して、一定の期間ごとに支払う方法です。例えば、契約書には「毎月金◯◯万円支払う」と記載されます。

定額制のメリットは、加盟店が負担するロイヤルティの金額が明確である点です。本部としても、ロイヤルティによる収益予測をしやすくなります。一方で、加盟店の売り上げとは関係なく算定されますので、契約期間を通してみると、歩合制に比べて本部のロイヤルティによる収益額は低くなる傾向があります。もっとも、定額制が採用されるケースでは、本部と加盟店の間で、商品の継続的売買契約が締結されるなど、他に本部が加盟店から収益を得る方法があることが多いです。

なお上記の例のように一定額を定めるのではなく、「店舗面積1平方メートルあたり金◯◯万円」など加盟店の店舗面積や席数を基にした計算方法を定める場合もあります。この場合も、基本的にはロイヤルティの金額は定額となります。

2 歩合制

歩合制とは、一定期間における加盟店の売り上げや利益に、あらかじめ設定した一定の比率(ロイヤルティ率)をかけた金額を支払う方法です。例えば、契約書には「毎月の総売上高の◯パーセントにあたる金員を支払う」と記載されます。このように売上高をベースにした場合(売上歩合方式)、契約時点はロイヤルティの額は明確ではありませんが、比較的簡単にその金額を算定することができます。他方で売上歩合方式は、売上高が同じであれば、売上原価が上がっても、ロイヤルティの額も変わらないことになりますから、加盟店にとっては大きな負担になります。

売上歩合方式に対して、大手コンビニチェーンなどでは、加盟店の「総売上利益」をベースにして算定するのが一般的です。「総売上利益」とは、見切り処分など廃棄した商品および万引きにより紛失など棚卸ロスの商品の金額を売上原価から控除して、その残額を総売上高から控除した金額のことを言います。この方法によれば、加盟店は、事業によって得られた利益に応じてロイヤルティを支払うことになり、過大な負担になることはありません。他方で、本部としては、加盟店の会計や在庫状況を正確に把握しなければならなくなり、他の方法に比べると負担が増えます。

いずれの算定方法にせよ、歩合制を採用すると、加盟店の売り上げによっては、ロイヤルティによる収益が得られなくなるリスクがあります。このような場合に備えて、本部としては、契約書に「最低ロイヤルティ額」を定めておくといいでしょう。

第3 ロイヤルティの支払いについて

冒頭で説明したとおり、ロイヤルティというのは、賃貸借契約でいうところの賃料に似たものです。したがって、その支払い方法や時期に関しても、同様の取扱いがなされています。すなわち、1ヶ月単位で算定したロイヤルティを、月末または翌月末に支払うというのが一般的です。また、ロイヤルティの金額は数十万円にのぼることが少なくありませんから、その支払方法は本部指定の口座に振り込む方法によるのが多いです。
さて、やや特殊なロイヤルティの支払方法として、「オープンアカウント」という方式を採用する場合もあります。これは、本部と加盟店との間で日々発生する金銭債権(金銭債務)を、あらかじめ定めた日に相殺して決済する方法です。「オープンアカウント」の例としては、以下のような方法があります。

<例:決済の流れ>

ステップ1 売上の送金

加盟店は、毎日の売上金を、全て本部に送金します。

これはあくまで加盟店の売上金を、本部が“預かる”という形式です。

したがって、本部は、売上金を加盟店に返還する債務を負います。

ステップ2 本部と加盟店の債権債務を相殺する。

  1. 本部は、一ヶ月単位で、ステップ1の債務を、加盟店に対する債権をもって相殺し、“清算”します。
    ここにいう本部の加盟店に対する債権とは、具体的にはロイヤルティや仕入れ代金などのことをさします。

ステップ3 売上金の返還

  1. ステップ2の結果、本部が加盟店から預かった売上金に残額があるときは、本部はこれを加盟店に返還します。

オープンアカウントは、本部と加盟店の間の債権債務を一度で決済できる点に大きなメリットがあります。もっとも、上記の例は、オープンアカウントの仕組みを単純化したものに過ぎません。実際に運用されているものは、利息などより複雑な計算が必要なことが多く、その仕組みもケースバイケースです。したがって、本部と加盟店は、事前によく話し合い、十分に理解した上でオープンアカウントという方式を採用するようにしましょう。

以上

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