フランチャイズ契約終了後の処理

第1 はじめに

「フランチャイズ契約の終了」とは、フランチャイズ契約の効力が将来に向かって消滅することを意味します。つまり、加盟店が本部の定めるフランチャイズ・システムから離脱し、以後本部と加盟店との間には新たな権利義務が発生しないことになります。

もっとも、フランチャイズ契約終了の効果は、原則として、権利義務が「発生しない」だけです。本部または加盟店の利益を保護するために、契約期間中に存在していた権利義務が、契約終了後も存続する場合があります。また、契約の内容によっては、例外的に契約の終了を原因として新たな権利義務が発生する場合もあります。

このコラムでは、本部と加盟店との権利義務関係を中心にして、フランチャイズ契約終了後に必要となる処理について説明します。

第2 契約終了後も存続する義務

1 既に発生している金銭債務

ロイヤルティや商品の仕入れ代金など、契約期間中に既に発生した金銭債務については、フランチャイズ契約終了後も存続します。したがって、本部および加盟店はこれらを速やかに清算しなければなりません。実務では、加盟店の債務については、契約時に交付された保証金が充当されるのが一般的です。

2 秘密保持義務

「秘密保持義務」とは、本部が加盟店に対して提供する経営ノウハウなどの情報を、不正に使用しない義務のこといいます。具体的には、①フランチャイズ契約の目的達成のために必要な範囲でのみ当該情報を使用すること、②当該情報を第三者に提供しないこと、を内容とするのが一般的です。

加盟店に秘密保持義務が課す趣旨は、本部が独自に開発した経営ノウハウなど大変価値のある情報を保護する点にあります。このような本部側の情報を保護する必要性は、フランチャイズ契約の契約期間中はもちろんですが、契約が終了した後も変わりありません。そこで、実務では、フランチャイズ契約の締結時に、あらかじめ加盟店が契約終了後も引き続き秘密保持義務を負う旨の契約条項を定めておくのが一般的です。

なお、契約上の秘密保持義務について、詳しくはコラム「秘密保持契約についての注意点」を参照してください。

3 競業避止義務

「競業避止義務」とは、フランチャイズ・システムの対象となる事業と同種または類似の事業(以下、「競業事業」という。)を営んではならないとする義務のことをいいます。

加盟店に競業避止義務を課す趣旨は、本部の経営のノウハウの保護と顧客や商圏の確保にあります。また、加盟店が、フランチャイズ契約に定められた範囲を超えて競業事業を行うことは、本部の提供した経営ノウハウなどの情報の不正利用の典型例ですから、競業避止義務は上記秘密保持義務の実効性を確保する効果もあるといわれています。このように考えると、競業避止義務に関しても、秘密保持義務と同様に、フランチャイズ契約終了後も加盟店に課される必要性があるといえます。そこで、実務では、秘密保持義務とともに、加盟店が契約終了後も競業避止義務を負う旨の契約条項をあらかじめ定めておくのが一般的です。

もっとも、契約終了後も加盟店に競業避止義務を課すというのは、加盟店の事業活動を制限することを意味します。そして、契約終了後の加盟店の競業避止義務が過剰なものだとすると、加盟店の職業選択の自由ないし営業の自由(憲法22条1項参照)を不当に制限することになるので、公序良俗(民法90条)に反して無効になる場合があると考えられています(神戸地判平成4年7月20日)。したがって、加盟店に対して、契約終了後も競業避止義務を課す場合には、競業が禁止される事業の範囲、地域、期間の3点を明確に定めて、契約終了後の加盟店の事業を不当に制限することがないように注意しましょう。

第3 契約終了を原因として発生する義務

1 保証金の返還

契約期間中に加盟店が本部に対して負う金銭債務(未払いロイヤルティや損害賠償金など)を担保するために、契約時に一定の金額が本部に対して交付されることがあります。これを「保証金」といいます。

この保証金は、加盟店が金銭を支払わない場合に備えて、あらかじめ交付された「預かり金」に過ぎません。したがって、原則として本部は加盟店に対して、フランチャイズ契約終了時に、保証金を返還しなければなりません。もっとも、加盟店に未払い債務がある場合には、本部はこれを保証金から控除して、その残額を返還することになります。

2 違約金・解約一時金の支払い

フランチャイズ契約でその定めがある場合には、契約の解除または解約をもって、違約金または解約一時金の支払義務が発生します。ここにいう「違約金」とは、契約違反など解除原因の存在によって発生する損害の額を、あらかじめ定めたものだと考えられています(民法420条3項参照)。他方で、「解約一時金」とは、契約当事者の一方の都合で解約を申し入れる際に支払わなければならない金銭のことだと説明されています。

なお、ここにいう「解除」と「解約」の意味については、コラム「フランチャイズ契約が終了する場合」を参照してください。

3 交付された物の返還等

加盟店の開業にあたり必要となる機器を、本部が加盟店に貸し渡すことがあります。このようにフランチャイズ契約の締結にあたって、本部から加盟店に貸し渡した物がある場合には、加盟店はこれを返還する義務を負います。

この他にも、加盟店は、フランチャイズ契約の終了に伴い、一定の事務作業を行う義務を負う場合があります。例えば、本部の商標等を使用した看板や商品の処分、本部から交付されたマニュアルの廃棄などがあげられます。

以上

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