商品の欠陥

第1 はじめに

企業の不祥事と聞いて思い浮かぶことの1つとして、製品の欠陥による事故があると思います。最近の事件で言えば、給湯器や石油ストーブの欠陥に関する報道や製品回収の案内などが挙げられます。製品の欠陥による事故が発生した場合、会社の信用を毀損し売上の減少などの損害が発生するだけでなく、多くの消費者が事故に巻き込まれる可能性がある点に特徴があります。したがって、他の不祥事と異なり、消費者保護の観点からより迅速に対応する必要があります。このコラムでは、製品の欠陥による事故が発生した場合の対応の大まかな流れを説明します。

なお対応の具体的な内容については、下記リンクの経済産業省の案内を参照してください。

※経済産業省の案内

・消費生活用製品のリコールハンドブック2010

http://www.meti.go.jp/product_safety/recall/handbook2010.pdf

・製品安全に関する事業者ハンドブック

http://www.meti.go.jp/product_safety/producer/jigyouhandbook.pdf

第2 製品の欠陥による事故への対応方法

1 会社内部での対応

(1) 事実の調査を行う

製品の欠陥から事故が発生した場合、事故に関する事実関係を迅速に調査し、正確に把握することが必要です。 具体的には、以下のような情報を収集することになります。

①いつ、どこで、誰が、どのような状況で事故に遭ったのか

②どのような事故が発生したのか

③被害の状況はどの程度か

④どの機種・型番の製品か、販売時期はいつか

⑤考えられる事故の原因は何か

これらの情報の収集は、被害者やクレーム担当窓口からの聞き取りからはじめるのが一般的でしょう。ここで重要となるのは、収集した情報を記録し、対策本部などで一元化して管理することです。したがって、事故発生後迅速に対応するために、対策本部をどこに設置するか、どのような連携体制をとるのか、誰が広報等の対応にあたるか、といった取決めをあらかじめしておくといいでしょう。

(2) 再発防止策を講じる

調査である程度のことが明らかになったら、正確な事故原因究明を行い、再発防止策を講じることになります。製品の事故の再発防止策というと、製品の技術的な改良が思い浮かぶことと思います。この他にも、製品の安全に関する対策委員会を設置するなど、製品の安全性をチャックし、製品の欠陥が見つかったときに迅速に対応できる体制の見直しを行うことも必要になります。また、「お客様対応マニュアル」の作成など、製品に関する事故の対応方法について、従業員に周知させることも重要になるでしょう。

2 消費者への対応

(1) 被害者への対応

製品の欠陥により、消費者が死傷したり、消費者の所有物を損壊したりした場合、会社としては、速やかに被害者への対応をとる必要があります。この被害者への対応は、その後の紛争の発展を回避し、報道による社会的信用の低下を最小限に抑えるために重要となります。

被害者への対応としては、謝罪、弔問、損害の賠償などが考えられます。ここで重要になるのは、「その時点でなし得る対応を、誠意をもって行う」ということです。もっとも、事故の発生が判明した時点で、すぐに事故の原因を明らかにして説明をしたり、損害の賠償をしたりすることは困難かもしれません。しかし、会社の役員や製品の責任者が被害者を尋ねて、謝罪を行うことはできます。その上で、時の経過によって明らかになった事項を随時報告し、必要に応じて損害賠償等の対応をすれば、会社側の誠意を示すことができます。

なお被害者に対する損害賠償責任に関しては、コラム「消費者の生活の安全確保のための規制-製造物責任法」を参照してください。

(2) 事故の再発を防ぐための対応 ~リコール~

事故が発生した製品の製造業者または輸入業者は、「消費生活用製品の回収を行うなど、危害の発生及び拡大を防止するための措置」(いわゆる“リコール”)をとることが要請されています(消費生活用製品安全法38条1項)。また、製品の販売業者もリコールの実施に協力することが要請されています(同条2項)。具体的には、以下のような措置を想定しています。

①消費者への注意喚起・情報提供

②製品の回収

③消費者の所有する製品の交換、改修(点検、修理及、部品交換など)、引き取り

リコールとしてどの程度の対応をすればよいかはケースバイケースです。一般的には、事故が発生する可能性の程度と人的被害が発生する可能性の有無・程度から判断することになります。例えば、事故が発生する可能性が低くても、人が死亡する可能性がある場合には、いち早く情報公開して製品を回収する必要があるでしょう。他方で、製品事態に不具合が発生するに留まり、人的被害が発生する可能性がまったくない場合には、事故が発生した時の個別の対応や注意喚起で済むこともあります。

リコールを実施する場合、実施することを消費者に周知しなければいけません。このとき、製品の使用者が特定できる場合と特定できない場合とで対応方法が異なります。製品の使用者が特定できる場合には、電話やFAX、DMなどで直接情報を提供することになります。他方で、製品の使用者が特定できない場合には、広告という手段をとるのが一般的です。もっとも、新聞やホームページだけでは十分に周知できないこともあるので、テレビやラジオを利用したり販売店の店頭で告知してもらったりする必要があるでしょう。

※消費生活用製品安全法とその適用範囲
消費生活用製品安全法は、原則として一般消費者向けに販売されている製品すべてに適用されます(消費生活用製品安全法2条1項参照)。ただし、食品や医薬品、毒物・劇物、車両や船舶などについては適用除外にされています。もっとも適用除外となるこれらの製品に関しても、個別の法令により同様の規制がなされているので、事故後の対応の流れは基本的に同じです。

2 監督官庁への対応等

製品の製造業者または輸入業者は、「重大製品事故」(死亡事故、重傷病事故、後遺障害事故、一酸化炭素中毒事故、火災)が発生した場合には、事故の発生を知った日から10日以内に、事故の概要を内閣総理大臣に報告しなければなりません(消費生活用製品35条1項)。具体的には、事故発生日、被害の概要、事故内容、事故への対応、製品の名称、機種・型式、製造・輸入・販売数、事故発生を知った日を報告することになります。
また「重大製品事故」以外の製品に関する事故や事故に結びつく可能性のある製品の欠陥については、経済産業省は「独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)」への報告を要請しています。

※事故情報・リコールの報告フォーム(経済産業省)

http://www.meti.go.jp/product_safety/form/index.html

以上

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