株主総会の招集手続②

なお本コラムは、コラム「株主総会の招集手続①」 の続きになっております。通し番号も同コラムから続くもの(第5~)になっておりますので、ご注意ください。

第5 株主に対して株主総会の開催を案内する

1 招集通知の送付先(誰に送るか)

招集通知の送付先は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主の株主名簿上の住所です(会社法126条1項)。具体的には、①基準日を設定しない場合は、株主総会の日の株主名簿上の株主、②基準日を設定している場合は、基準日時点における株主名簿上の株主となります。

実際に到達しなくても、通常到達すべき時に到達したものとみなされます(会社法126条2項)。

なお、「基準日」については、コラム「株主総会の招集手続①」を参照してください。

2 所在不明株主の扱い

招集通知は株主名簿上の住所に送付する必要がありますが(会社法126条1項)、株主が所在不明となって、5年以上継続して通知が届かない場合には、当該株主に対する招集通知の発送は不要となります(会社法196条1項)。招集通知を発送しない場合は、継続5年間継続して不到達であった根拠を明示できるように、資料を保管しておきましょう。

なお、①5年以上継続して通知が届かず、かつ、②当該株主が5年以上継続して剰余金の配当を受領しなかった場合、会社は、その株式を競売して代金を株主に交付することにより、株主の権利を消滅させることが可能です(会社法197条1項)。

3 招集通知の送付方法(どうやって送るか)

招集通知は口頭で行うことも可能です。ただし、①取締役会設置会社の場合、または②書面もしくは電磁的方法によって議決権を行使できることにする場合には、書面または電磁的方法によって招集通知を行わなければなりません(会社法299条2項3項)。

また、書面または電磁的方法によって議決権を行使できることにする場合には、議決権の行使について参考となるべき事項を、書類の送付または電磁的方法により提供しなければなりません(会社法301条、302条参照)。

この招集通知は、株主総会の日の2週間前(非公開会社の場合は1週間前)までに、株主に対して発送しなければなりません。2週間前までに、「到達」しなくても、「発送」すれば足ります。「2週間前」とは、中14日間を意味します。株主総会日が6月26日であれば、6月11日までに通知を発送する必要があります。

通知の時期が、株主総会日までの2週間に不足する場合、招集手続の不備として、後から決議が取り消される理由となるので、ご注意ください。

第6 書面による議決権行使・電磁的方法による議決権行使

1 意義

会社法では、株主が議決権を行使する機会を広く確保するするために、書面による議決権行使(書面投票制度)と電磁的方法による議決権行使(電子投票制度)が認められています。書面投票制度または電子投票制度を採用するかどうかは、原則として株主総会の開催決定権限を有する取締役(取締役会)の判断に委ねられます。ただし、議決権を有する株主の数が1000人以上の株式会社では、書面投票制度が義務づけられています(会社法298条2項。再例外として会社法施行規則64条。)。

会社には、株主総会日より前に賛否を知ることによって、一定程度の票読みができるというメリットがあります。しかし、株主総会の招集通知での手間が増えるため、必要書類の記載漏れなどの不備が発生するリスクも増えます。これから書面又は電磁的方法による議決権行使を採用する場合には、この点に十分注意し、必要があれば弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

2 議決権の行使方法

書面による議決権の行使は、議決権行使書面に賛否等の必要な事項を記載し、株主総会日直前の営業時間の終了時までに、当該議決権行使書面を会社に提出して行います(会社法311条1項、会社法施行規則69条)。

電磁的方法による議決権の行使は、株主総会日直前の営業時間の終了時までに、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により当該株式会社に提供して行います(会社法312条1項、会社法施行規則70条)。

第7 株主総会当日までの活動 ~株主名簿の閲覧・謄写請求~

1 意義

株主総会当日までの間、株主はいわゆる「多数派工作」のための活動として、他の株主に委任状の勧誘をしたり、書面投票を呼びかけたりすることがあります。また、株主提案など一定の割合・数を要する株主の権利を行使するために、他の株主の支持・協力を取り付けることもあります。これらの活動を行うためには、他の株主の情報が必要不可欠です。

この他の株主の情報が記載されたものが「株主名簿」です。株主名簿には、株主の氏名・名称及び住所、保有する株式の種類・数、保有する株式を取得した日などが記載されています(会社法121条)。

2 株主名簿の閲覧・謄写にかかる原則と例外

株主名簿は、会社の本店に備え置かれており(会社法125条1項)、株主は、会社の営業時間内であれば、いつでも理由を明示して株主名簿の閲覧・謄写を請求することができます(同条2項)。

もっとも、上記の通り株主名簿に記載された情報は、株主のプライバシーに関わる重要なものであり、悪用されては困ります。したがって、会社は以下の場合には、株主名簿の閲覧・当社請求を拒むことができます(同条3項)。

  1. ① 株主の権利の確保又は行使に関する調査以外の目的のとき。
    ② 会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的のとき。
    ③ 請求者が、会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事する者であるとき(※)。
    ④ 株主名簿の情報を、利益を得て第三者に通報する目的のとき。
    ⑤ 請求者が、過去2年以内に、株主名簿の情報を、利益を得て第三者に通報していたとき。
    ※平成26年の会社法改正により③は削除さています。

第8 株主総会の決議の省略(書面決議)

さて、ここまで株主総会の開催に向けて、招集手続を中心に株主総会当日までの流れを説明してきました。もっとも、会社法では、実際に株主総会を開催しないですませる方法も用意しています。これを「株主総会の決議の省略」あるいは「書面決議」といいます。

株主総会の決議の省略は、取締役又は株主が提案した事項について、「議決権を行使することができる株主の全員が、書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき」に認められます(会社法319条1項)。このとき、「当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみな」されるとともに、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなされます(同条5項)。つまり、実際に株主がひとつの場所に集合して決議することなく、株主総会は開催されたことになるのです。

株主総会の決議の省略は、株主全員の同意が必要なため、非常にハードルの高い制度になっています。また手続に不備があった場合には、当然取消し又は無効事由になります。したがって、この手続を採用する場合には慎重に検討するようにしましょう。

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