破産手続の流れ

第1 はじめに

コラム「法的整理手続の特徴」で、法的整理はその目的と手続の態様に応じて、4つの類型に分けることができることを説明しました。このコラムでは、そのうち破産手続について詳しく説明します。

第2 破産手続とは

破産手続とは、破産管財人という債権者でも債務者でもない中立的な第三者の主導によって、債務者の資産を清算し、債権者に平等に配当する手続のことをいいます。つまり、破産手続は、債務者の資産を処分して債権者に配当することを目的としている点で清算型手続であり、債務者が財産・事業についての管理処分権を喪失し第三者(破産管財人)が管理権を有する点で管理型手続であるといえます。なお、債務者の資産が極めて少ない場合には、破産管財人が選任されないこともあります。これを「同時破産手続廃止」といいます(破産法216条)。

破産手続の申立てがされると、その後は破産法の規定に基づいて手続が進行していくことになります。ですから、破産手続の申立て後は、取引先に対する売掛金があっても他の債権者に抜け駆けして回収したりすることは原則として認められません。ただし、例外的に担保権の行使や相殺という形であれば破産手続によらなくても債権を回収することができます。破産手続における担保権の行使や相殺については、コラム「破産手続における債権回収」を参照してください。

第3 破産手続の流れ

1 破産手続開始申立て

破産手続は、申立てを受けて、裁判所が開始決定をすることによって行われます。申立ては債務者によって行われることがほとんどですが、債権者も行うことができます(破産法18条1項)。たとえば、私的整理が不適正な形で進行していたり、取引先が財産を隠匿している疑いがあったりするような場合に、債権者が破産申立てをすることがあります。

なお、債権者みずからが破産申立てをすることを特に「自己破産」といいます。「自己破産」という言葉自体は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

2 破産手続開始決定

裁判所が、取引先は支払不能の状態にあると判断したときは、破産手続開始の決定がされます(破産法15条1項)。支払不能とは、取引先が支払能力を欠くために弁済期にある債務の弁済ができない状態を意味します(破産法2条11項)。

取引先が法人の場合には、支払不能の状態にある場合のほかに加えて、債務超過の状態でも破産手続開始の決定がなされます(破産法16条1項)。

3 破産管財人選任

裁判所は、同時破産手続廃止の場合を除き、破産手続開始の決定と同時に破産管財人を選任します(破産法31条1項)。破産管財人とは、破産者(=取引先)の財産を管理・換価、債権者の財産調査、換価した財産の配当などを行う者のことです。ほとんどの場合弁護士が選任されます。

なお、東京地裁の実務上の扱いを紹介すると、法人の破産手続についてはすべて破産管財人が選任されるという運用がされているようです。

4 関係者のすべきこと

破産手続開始の決定があると、裁判所から債権者に対して破産決定開始を伝える通知が届きます。そして、適正に破産手続を進めるために、関係者がやらなければいけないことが出てきます。

(1) 債権者のすべきこと

まず、破産手続で債権を回収するために、自己の債権を届け出る必要があります。債権の届出は、裁判所から送られてくる債権届出書を提出することで行います。

また、取引先との間で相殺ができる場合は必ずしておくべきですし、担保権を有している場合には、担保権の実行もできます。

以上の詳しい方法については、コラム「破産手続における債権回収」で説明します。

(2) 破産管財人のすべきこと

破産手続における破産管財人の仕事は、おおまかにいうと、①破産法に従って債務者の資産を金銭に換えること(これを「換価」といいます。)、②①の金銭を破産法に従って債権者に分配すること(これを「配当」といいます。)の2点です。

①換価に向けてをするために債務者の資産を算定するにあたり、債権者からウソの債権や既に支払済みの債権の届出がなされることがあります。そこで、破産管財人は、債権者が提出した債権届出書に記載された債権の有無及び額に間違いないかの認否をします。

また、破産法上、破産手続開始決定前でも、破産者が債権者を害する一定の行為をすることは認められません。たとえば、財産の隠匿をしたり、一部の債権者に優先的に弁済する行為は認められないのですが、このような行為が行われていたときに、管財人は、これらの行為をなかったことを主張し(これを「否認権の行使」といいます。)、隠匿された財産を回収したり、一部の債権者から弁済された金銭を取り戻すこととなります。

5 債権者集会

債権者集会では、破産管財人が、債権者に対して、破産に至った経緯や破産手続の状況、届出債権の認否について説明します。

債権者集会は破産管財人から説明を受けるだけですので、出席しなくても配当額に変化はありません。ですから、配当がまったく見込めない事案や、破産管財人からの説明を聞く必要がないと思われる事案では、債権者は出席しません。実際に、債権者集会に債権者が一人もいないという事態もよくあります。

6 配当

債務者の資産が確定し、金銭に換えると、裁判所の許可を得てその金銭を債権者に分配することになります。破産管財人から配当の通知が届いたら、自社の配当額に計算間違いがないか確認します。そして、提出期限内に破産管財人に振込依頼書を送付します。

配当が終わると破産手続は終了します。破産者が法人であって残った財産がまったくない場合には、その法人は完全に消滅します。

以上

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