有限会社と会社法

第1 有限会社とは

1 株式会社とのちがい

コラム「会社法ってなに?」で、会社とはロボットのようなものであること、「会社」と呼ばれるものには、株式会社のほか「有限会社」というものがあることを説明しました。では、この株式会社と有限会社はどのような違いがあるのでしょうか?1つの見方としては、会社という「ロボット」のサイズが異なります。以下、「ロボット」のたとえを交えて説明しましょう。

より多くの影響力をもつ「ロボット」を作ろうとすれば、多くの投資家からの出資を受けてそのサイズを大きくしていくことが考えられます。このようなおよそ1人の人間ではできないようなことができる大きな「ロボット」が、会社の典型例である「株式会社」です。一方で、世の中には「大きなサイズでなくてもいい。小さくてもある特定の部門に特化したものを作りたい!」と思う人もいます。このような株式会社と比べて小規模な「ロボット」こそが「有限会社」と呼ばれるものです。

このサイズのちがいは、法律の世界で次のようなかたちになって表れます。コラム「会社法ってなに?」で、会社という「ロボット」に欠陥等が発生しないために会社法などのルールがあると説明しました。さて、ロボットのサイズが違えば、当然ロボットの構造や運用の仕方などにも違いが出てきます。また、仮に欠陥や操縦ミス等が発生したとしても、小型のロボットの方が、発生する損害や周囲に与える影響は比較的小さくなることが予想されます。そうすると、「小型のロボットについては、大きなロボットよりも簡易なルールでいいのではないか。」と考えることもできるでしょう。そこで、有限会社に関する規制や手続は、株式会社のものと比べると簡略化されています。

2 有限会社の現在

このような「有限会社」という特別な制度を設けたのは、会社を設立したいと考えている人のニーズに応じて、自由に制度選択できるようにするためでした。しかし、「有限」という言葉のイメージから、株式会社に比べて信用力が劣ると認識されるようになり、実態は有限会社と差がないのに無理に株式会社の形態を選択するケースが増加するようになりました。このような情勢を受けて、平成17年に制定された会社法では、有限会社という制度を廃止して、従来の有限会社の形態を取り込むかたちで株式会社制度を再編成しました。

したがって、会社法によって規制されている現在では、有限会社を新たに設立することはできません。一方で、既存の有限会社については、会社法施行後も存続できるように特別な制度が設けられました。これを「特例有限会社制度」と呼び、会社法と併せて成立した「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下、「法」)で規律されています。

第2 特例有限会社制度の下での有限会社

1 特例有限会社であることのメリット

会社法施行前の有限会社は、会社法施工後は「特例有限会社」と呼ばれます(法3条2項参照)。特例有限会社は、会社法施行後も「○○有限会社」という商号を用いて、存続するものとして取り扱われています(法2条1項、3条1項)。

それ以外の取扱いについては、簡単に言うと「形式的には株式会社として扱われるけど、実質的にはこれまでの有限会社と変わらない」かたちになっています。会社法施行後の株式会社が、従前の株式会社と有限会社を統合したようなものですので、当然の帰結とも言えますが、以下の点で有限会社であることを維持するメリットがあると指摘されています。

  1. ① 取締役・監査役の任期について、制限がありません(法18条)
  2. ② 株式会社に義務づけられている計算書類(貸借対照表、会社法440条1項参照)の公告が不要です(法28条)
  3. ③ 商号変更などの手続が不要なため、様々なコスト、労力がかからない

2 特例有限会社であることのデメリット

一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  1. ① 株主総会、取締役以外には監査役しか機関を設置できない(法17条)
  2. ② 「株主相互間で譲渡する場合を除き、全ての株式に譲渡制限がついている」という枠組みを取り外せない(法9条1項)
  3. ③ 株主総会の特別決議の要件が加重(※注)されるため(法14条3項)、定款変更や合併などの決議がやや困難になる。
  4. ④ 合併や会社分割、株式交換・株式移転の制限がかかる(法37条、38条)

このようなデメリットを克服するためには、通常の株式会社に移行するしかありません。具体的には、商号を「○○株式会社」に変更する旨の定款変更を行い(法45条1項)、特例有限会社についての解散登記と株式会社についての設立登記をする必要があります(法46条)。

※注釈:「加重」の内容(デメリット③の部分)
会社法上の株主総会の特別決議は、出席した株主の議決権数が議決権を行使することができる株主の議決権の過半数以上であり、かつ出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成多数で行われます(会社法309条2項)。
これに対して、特例有限会社の場合には、頭数で数えて総株主の半数以上であって、かつ株主の議決権の4分の3以上の賛成多数で行われます。

まずは弁護士事務所へお気軽にご相談ください!

  • さいたま大宮 048-662-8066 対応時間.9:00~21:00
  • 上野御徒町 03-5826-8911 対応時間.9:00~21:00

法律相談は、すべて当事務所にお越しいただいた上で実施いたします。
電話での法律相談やメールでの法律相談はいたしかねますので、あらかじめご了承ください。
また、初回の法律相談のお申し込みは、すべて、お電話またはご相談申込フォームからお願いいたします。

ページ先頭へ