株主の権利

第1 株主・株式とは

コラム「会社設立の流れ」で、会社というロボットをつくって運用するためには資金が必要であり、この資金を提供する者がいることを説明しました。そこでまずはロボットのたとえ話を用いて、「株主」「株式」というものの概要を説明しましょう。

ロボットをつくるのに1000万円必要だとします。この1000万円を持っている人を探し出して、その上で1000万円を提供してもらえるようお願いするのはなかなか骨の折れる作業です。他方で、1万円を持っている人は世の中にたくさんいます。そうすると、1000万円を一括で提供してくれる人を探すよりも、多くの人に少しずつ資金提供をお願いした方が簡単だ、と考えることもできます。そこでたとえば“1口10万円”という形式で資金提供をお願いして会社に必要な資金を調達する仕組みが作られました。この“1口10万円”という単位のことを「株式」といいます。この株式を取得して、会社の活動によって生じた利益を受け取るなど会社に対して一定の権利を有する者のことを「株主」と呼びます。

会社というロボットは、株主の資金提供があってはじめてかたちになり、活動をすることができるものですから、“会社は、株主のもの”“株主は、会社のオーナー=所有者だ”ということができるでしょう。したがって、株主は会社の活動と強い利害関係を有することになります。以下、株主が会社に対してどのような地位・権利を有しているのかを説明したいと思います。

第2 株主の権利の内容

1 自益権

何の見返りもなく資金提供をする人はほとんどいないでしょう。会社が株式を発行するとき、株主となろうとする者は一定の経済的利益が受けられるから資金提供を行います。この経済的利益を受ける権利のことを「自益権」といいます。

会社が事業活動を行うと利益を出すことができます。この利益は、株主が出資してくれたお陰だ、ということができますから、出資してくれた額に応じて“おすそわけ”をすることになります。この“おすそわけ”のことを、「剰余金の配当」といいます(利益から経費等を控除した額を分配するので「剰余金」という言葉を使います)。剰余金の配当を受け取ることができる権利は、自益権の1種です(会社法105条1項1号)。

会社をたたむとき残った財産(残余財産)も“株主のもの”と言うことができます。この剰余財産の分配を受ける権利も、自益権の1種です(会社法105条1項2号)。

2 共益権

会社というロボットの運用は、プロのパイロットである「取締役」に任せる、ということはコラム「会社の機関」で説明しました。ただ株主としては、会社のすべてのことを取締役に丸投げする、というわけにはいきません。株主が受け取ることのできる利益の額は、会社がどれだけ利益をあげられるかにかかっているからです。したがって、株主には取締役の行うことに口出しをし、あるいは監視する権利を認める必要性が出てきます。このように株主が会社の経営に参与し、または会社経営を監視・是正することができる権利のことを「共益権」と呼びます。

共益権の属する権利は、会社法上いくつも存在します。まず会社の基本的な事項を決定する株主総会(コラム「会社の機関」参照)で1票を投じる権利、「議決権」があげられます(会社法105条1項3号)。議決権の行使はこれからの会社の行く末を決める重要なものですから、株主としては、会社の経営状態についての資料を集めたり、取締役に質問したりして十分吟味をしてから1票を投じたいと考えるでしょう。また、場合によって、株主の方から提案をしたいということもあるかもしれません。会社法では、取締役等が作成した書類の閲覧を請求する権利(会社法371条2項、433条1項、442条3項など)や質問をする権利(会社法314条)、提案をする権利(会社法303条~305条)を認めており、これらも共益権に属します。

取締役等の行為が行き過ぎている場合には、これを止めて、場合によっては責任を追及することも必要です。例えば、定款に反する取締役の行為を差し止めたり(会社法360条1項)、会社に発生させた損害を賠償させたりする(会社法847条参照)ことがあげられます。これらの権利も共益権に属する権利です。

一方で、共益権に関しては、いわゆる“クレーマー”のような人が頻出しては、会社の運営が妨げられ、会社や他の株主の利益を害することになります。そこで、一部の共益権については、会社との利害関係に強い株主、すなわち一定数の株式を有している株主だけが行使できるものとしました。このような権利を「少数株主権」と呼んでいます。これに対して、1株でも有していれば行使できる権利を「単独株主権」と呼んでおり、自益権や議決権がその代表例です。

なお訴えを提起して行使することのある共益権に関しては、コラム「会社や株主自身のためにできること」を参照してください。

以上

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