スクイーズアウトについて

第1 はじめに ~スクイーズアウトとは~

会社を経営する上で必要となる資金を調達するためには、広く出資してくれる人を募集することが最も効率的です。しかし、そうして出資者が増えることは、会社の経営にあたりリスクとなる場合があります。たとえば、一般的に株主になるために必要な資格というものはありませんから、現在の会社の経営方針に批判的な者が株主になることも可能です。そうすると、その株主が株主総会で批判的な言動を行うなどすると、円滑な経営が妨げられるおそれがあります。上場会社の場合は、株式が転々と流通するすることが予定されていますから、このリスクは一層高まることになります。

このような場合に、金銭その他の財産を交付することで株主から株式を回収して、株式を株式保有数が多い株主ひとりに、または、経営方針が合致している数人だけに株式を集中させることで、株主構成をシンプルにし、経営を円滑化することが考えられます。このような形式で、一定の株主を追い出すことを「スクイーズアウト」といいます。

スクイーズアウトの方法として、株式交換(会社法2条31号)や株式の併合(会社法180条1項)を用いられる場合もありますが、「全部取得条項付株式」を用いるのが一般的です。全部取得条項付株式については、コラム「種類株式について」およびコラム「種類株式の活用方法①」コラム「種類株式の活用方法②」を参照してください。

第2 スクイーズアウトの方法

代表的な全部取得条項付株式を用いたスクイーズアウトは、以下のような手続きによって行われます。

1 スクイーズアウトに向けて、できる限り株式を集中させる

後述する手続を進めるためには、株主総会で議決権を行使することができる株式の3分の2にあたる多数の賛成があることが必要となります。そこで、公開買付や個別の交渉などによって、スクイーズアウト後に株主となる者が、できる限り多くの株式を取得しておくことが望ましいと言えます。

2 定款の変更を行う

株主総会の特別決議により、2つ以上の内容の異なる株式を発行する旨(会社法108条1項柱書)の定款変更を行います(会社法466条、309条2項11号)。これによって、普通株式だけでなく全部取得条項付株式を発行できるようになります。

そして、発行済株式の全てに全部取得条項付を付する旨(会社法108条1項7号、同条2項7号)の定款変更を行います(会社法324条2項1号、111号2項1号)。

3 株式の全部を取得する旨の決議を行う(会社法171条1項)

株主総会の特別決議によって、会社による全部取得条項付株式の取得および支払われる対価を決定します。

このときのキーポイントは、①対価を株式にすること、②追い出したい株主に交付する株式の数が、計算上1株未満になるような条件にすることです。たとえば、発行済株式が100株、株主Aが90株、追い出したい株主BおよびCがそれぞれ5株保有していた場合には、「全部取得条項付株式10株あたり、普通株式1株を交付する。」という条件にします。このようにすると、Aだけが普通株式を取得(9株)することができ、BおよびCは1株に満たない端数になります。この端数の株式は売却されて(通常会社自身またはAが買い手となる)、BおよびCに対価としての金銭が交付されることになります(会社法234条参照)。

なお、(2)と(3)の決議は、実務上一度に行うことができるとされています。

4 株主名簿の書き換えを行う

コラム「株式の譲渡について」で説明したとおり、会社の株主の取扱いは、株主名簿の記載にしたがって行われ、株主の譲渡があったことは名簿書換請求というかたちで株主の側が会社に対して報告をする、というのが一般的です。これは、会社の便宜のための取扱い方法です。しかし、スクイーズアウトがあったことを株主名簿に反映しておかないと、“私は株主名簿上の株主だ”と追い出された株主が主張してくるおそれがあります。したがって、(1)から(3)までの手続の後、速やかに株主名簿の書き換えを行っておきましょう。

第3 スクイーズアウトのメリット・デメリット

スクイーズアウトのメリットは、冒頭でお話ししたとおり、経営に口出ししてくる株主を排除して、より円滑な経営ができるようになる、という点です。

他方で、スクイーズアウトを行うデメリットが発生する場合があります。スクイーズアウトを実施する際、保有株式が1に満たない端数になった株主に対しては、対価を交付しなければなりません。スクイーズアウトを行った会社の資産価値が高い場合には、株式の価格も高くなりますので、株式に支払う対価の額も高くなります。対価の額や支払う人数によっては、会社にとって大きな負担になり得るという点にデメリットがあります。

第4 スクイーズアウトへの対抗策

スクイーズアウトに反対する株主がとりうる手段は、そう多くはありません。1つの方法は、株式買取請求権を行使して、より良い条件で株式を買い取ってもらうことです。まず反対株主は、上記定款変更決議に反対して、株式の買取を会社に請求することができます(会社法116条1項2号)。全部取得条項付株式の取得対価に不満がある場合には、裁判所に対して価格決定の申立てを行うことができます(会社法172条)。

“スクイーズアウト自体を妨げたい”というのであれば、株主総会の特別決議の瑕疵を主張し、決議の効力を争うことが考えられます。例えば、①特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議にあたるとして株主総会決議の取り消しの訴えを提起する(会社法831条1項3号)、②決議の内容が株主平等原則(会社法109条1項)に反するとして株主総会決議無効確認の訴えを提起する(会社法830条2項)があります。もっとも裁判例では、反対株主に対する対価が著しく低廉になるような条件でない限り、上記訴えは認めていませんので一度手続きが始まってしまうとこれを止めるのは難しいと思われます。

上記2つの方法でも不満だとすると、特定の株主に総株式の3分の2以上の株式を取得させないように自分も株式を取得する方法しかないでしょう。

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